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2005年10月 2日 (日)

ジル・ケペル『宗教の復讐』

宗教政治学のお手本がない!! と書いたが(→ こちら)、 ヒンドゥー・ナショナリズム研究をやっていくに際して (正確には、ヒンドゥー・ナショナリズムの世界史的な位置づけについて考えるに際して) 僕は 徒手空拳であったわけではない

もっともよく参考にしてきた一冊は ジル・ケペル『宗教の復讐』 (→ アマゾンなら こちら) である。 (英訳も読んでいるが、、、 お恥ずかしい、、、 僕はフランス語が読めない、、、原典を読んでいない、、、)

この業界ではもはや「古典」のおもむきすらある この本。 『 現代宗教事典 』に独立項目が立っていたりする。

たしかに役に立つ。 しかも 世界的にみても、この分野ではもっとも早い業績でもある。 (最初の著作が一番よい、、、というのは よくあること。 まさに 古典!!) 

ただし 難点がある。 

第一に、 ケペルが近代性と宗教性を 比較的単純なしかたで 対立的に理解しているところだ。 この本・・・ 各地の情勢 (政治と社会の情勢。 「社会」も入っているところが、この政治学者による著作の長所のひとつだ)を かなり繊細にフォローしている。 また、 いろいろな限定をつけて、 現代史の厚みを描こうとしている。 けれども!! フランス的な発想なんだか、 ヨーロッパ的なんだか、 西洋的なんだか よく知らないけれど、 結局 大枠が 宗教 vs 近代性 という おなじみの 二項対立図式 になってしまっている。 (この図式の不毛については こちらの論文 で論じさせていただいた)

第二に、 これまたよくあることだけど・・・ いわゆる「原理主義」の比較研究が目指されているこの本、、、 やっぱり セム的一神教 (ユダヤ教、キリスト教、イスラーム) だけが対象になっている。 インドのことなんて、ほんのちょっと ポロッとふれられるだけ。 これは やっぱり 「宗教論」 としては 弱いです。 仕方ないこととはいえ、 どうしてもこうなっちゃうんだよなぁ・・・ 実際、 僕もそういことできていないし・・・

このような批判はあるのですが、 ともあれ 今でも折にふれ 手に取る一冊なのでした。

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