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2005年11月28日 (月)

市民宗教

最近ずっとつづけている カサノヴァ 読解 (前便は こちら

メモを作ってあった論点が ひとつあったのだが

ちょうどそれについて書くきっかけができた

いつもお世話になっている 川瀬さんのブログこちらのエントリ

次のように書いてあったのだ

市民宗教」 とは、 社会学の用語で、 明確な輪郭を持った教団宗教とは違い、 いわば 「常識」 という言葉でカヴァーされるような、 その社会の価値体系を構成しているもの、 といってよいと思うが (間違いや補足があればご指摘ください)、 例えば日本の場合では 「私は無宗教です」 と言いながら初詣や墓参りは欠かさなかったりするのも、 一種の 「市民宗教」 と言ってよいだろう。 [強調は引用者]

こうした市民宗教論は 欧米のものとは やや強調点が異なっている

いわば、日本的な理解だ

欧米で 「市民宗教」 と言われる場合

それは もっともっと「政治的」なもの

カサノヴァから一節を引く

「市民宗教」 という近代的な概念は、 ルソーの著作にはじめて現われてからロバート・ベラーによって磨きあげられるまで、 古典的な共和主義的美徳の伝統と、 およびその伝統がもつ近代のリベラルな政治的伝統への不信とに、 密接なつながりをもっている。 ベラーによるアメリカの市民宗教論においては、 この共和主義的な伝統は、 契約宗教的で政治的な共同体のカルヴィニズム的伝統と融合し、 またデュルケーム派の規範的な機能主義的な伝統とその道徳概念 ――利己主義的、 功利主義的、 非機能的な個人主義に対置された機能的個人主義―― と融合したものになった (邦訳 79頁)

つまり、 市民宗教論には 「市民」 という概念の重みがそのままかかっている

とみなさねばならない

それはもちろん

日本語で言うところの 「常識」 とか 「世間」 の次元を含んでいる

しかしそれだけではない

それは、 とくに国家との関連において政治的に生きるヒトの宗教 なのである

デュルケームからベラーへの 「社会レベル」 における 「社会学的」 な市民宗教論は

あくまでも

そうした 「古典的な共和主義の伝統」 の近代における残存と変容という文脈

において意味をなす

とまぁ、、、そんなところで どうでしょうかねぇ・・・

【メモ】

このエントリには 直接のつづき がある

後便 「市民社会と民俗」 がそれ!

ぜひご一読ください (100131追記)

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コメント

近藤様

TBありがとうございます。いわれてみれば、確かに僕は日本的な市民宗教のとらえ方をしていましたね。靖国問題も、あれを「市民宗教」と見なすかどうかが争点のような気もします。
しかし、国家との関係「だけ」に注目してしまうと、「ナショナリズム」という代替宗教(市民宗教)、という決まり切った落としどころにいきそうな気もするのですが(そういう側面もあるでしょうけど、それだけでは面白くないなあ、と思います)。

この概念は使い勝手が良さそうに見えますが、やはり実際には難しいですね。少し舌足らずですが。

川瀬さん>

コメントありがとうございます。お返事がおそくなり、失礼いたしました。

日本でもインドでもそうですが、問題は、「市民」という概念が 社会生活(今風の言い方では、公的生活)において 充分な広がりと深さをもって定着してはいない、ということではないでしょうか。

「靖国信仰と市民宗教」 という方程式が どうも解きづらいのは、まさにそのせいではないでしょうか。 つまり、基準となるべき「共和主義的」な公共生活の伝統(精確には、規範的伝統)が 日本やインドには ごく表層的、部分的にしか存しない、、、と、、、 ミスリーディングではありましょうが、とりあえず そのようなことを考えたりします。

川瀬さん>

急いで書いたもので、上のコメント なんだか 荒っぽすぎますね。読み直して 反省してます。

日本の場合、共和主義やリベラリズムをふりかざすと、「サヨク」と呼ばれて終わりにされてしまう、、、 そんな思想状況が わずか60年でできあがっていますよね。

インドの場合、日本よりも 実はもっと広く深く、共和主義やリベラリズムは「現地化」されています。 でも、日本と違うのは、何よりも その社会的階級構造です。 現地化されたのはたしかですが、大衆化はしていないのです。 

こういった地域において、市民宗教という概念が どのような有効性をもちうるのか、、、 僕はそこが疑問なのです。

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