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2006年1月12日 (木)

2005年の4冊目

2005年の面白かった本、こちら で3冊目を追加しましたが、、、またも思い出してしまいました。 2005年の4冊目 です。

  • ヴィンセント・クラパンザーノ 『 精霊と結婚した男 ― モロッコ人トゥハーミの肖像 』 ( 大塚和夫・渡部重行訳、紀伊国屋書店、1991、原1980 )

人類学のモノグラフの傑作をシリーズで読んでいこうと思い立って、信頼する人類学者の方におすすめを一冊だけあげてもらったのですが、その中の一冊。 紹介者はFさん。

正直申しあげれば、これを去年に読んだのか、一昨年だったのか、よく思い出せないのです。

しかし、こちらの本、通称 『 トゥハーミ 』 、ここ数年をとっても もっとも ガツン ときた一冊です。 衝撃の度合いからすれば、イギリスのオックスフォード滞在中に読んだ テリー・イーグルトン 『 イデオロギーとは何か 』 (大橋洋一訳、平凡社、1999) 以来のものでした。

とにかく!! この本はよかったなぁ !! 切なくて 美しくて 泣きそうになりました。

もちろん この本は、人類学、ひいては人文社会科学全般に対する理論的、倫理的な問題提起をしています。

それは実に 深刻で激烈な 問題提起です。つまり、第三世界、アフリカの一 「 狂人 」 の日常を、人類学者が 「 分析 」 することなく 「 記述 」 し、それをモノグラフとして出版、公開するということです。 そこには、深く考えるべき問題が、きわめて意図的に示されています。 しかし、それよりも何よりも 、、、

やはり芸術作品、文学作品として すばらしい、すばらしすぎる、と思うのです。

こんな本が書けたら、もう一生 なにもする気がおきないだろうなぁ。。。

<メモ>

あまりイメージを固定したくないので、控え目に言いますが、『 トゥハーミ 』 は 僕にはちょうど村上春樹の作品みたいに読まれたのでした・・・

  • ひねもじら乃太朗さんのブログ、こちらのエントリ から入って、カテゴリから 「 村上春樹 」 を選択。 僕などには とてもよく納得できる講評がのってます。
  • 内田樹先生のブログ、 こちらのエントリ では、村上好きの僕は力を得たものである。

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コメント

専門家の方のサイトと並べて本文でご紹介いただき恐縮です。村上作品についての考えをまとめたい、というのがブログを始めた理由の一つだけに、このような形でご紹介いただけるのはとてもうれしいです。
TBさせていただきました。

ひねもじら乃太郎さん>

早速のコメント、ありがとうございます。その上、こちらにまでTBしていただきまして、恐縮しております。

乃太郎さんのブログ、楽しく読ませていただきました。私はほとんど小説を読まないのですが、たまに読むなら、村上春樹と決めております。と言っても、年に1~2冊、、、というところ。やっぱり専門の本を優先的に読んでしまいます、、、というか、読まないわけにはいかないのです。仕事ですから。

ひとつ 意見をさせていただければ、私の『ねじまき鳥』評は 乃太郎さんのものとは 異なります。

ご指摘のとおり、『ねじまき鳥』は村上作品のなかでもとりわけ破綻していて、グチャグチャですね。しかし、私は だからこそ この作品を愛しております。

乃太郎さんご指摘のとおり、村上は極度の技巧派ですが、それが僕には ときどきかえってつまらなくなります。

『ねじまき鳥』は壊れているところにこそ、味わいがある。『アンダーグラウンド』へと向かう、彼の転機を画する作品だと思うのです。

なんだか、そのみずみずしさが 僕にはとてもいとおしく思われます。

出過ぎたことを申しあげましたが、小説・文学素人(謙遜ではなく、本当に素人)の戯言として、どうぞお聞き流しください。

『ねじまき鳥』が壊れていて、かつ転機を画する作品である、という認識が同じですから、コンドウさんとわたしの作品理解はかなり近いと思います。わたしにとってはこれが大事で、それを好むかどうかは人それぞれだと考えておりまして、こだわりません。どうかお気遣いなさいませんように。

ちなみに、作家や時流を論じるならともかく、個々の作品の感想に素人も専門家も無いだろう、と開き直っていますので、ときどき偉そうな書き込みをしているかもしれませんが、わたしもまったくの素人です(笑)。

乃太郎さん>

なるほど、そう言われてみれば、乃太郎さんと私の『ねじまき鳥』の作品評そのものは、あまり変わらないのですね。 「好み」のところで、違いが出てくるのだ、、、と

フムフム、なるほど、と納得した次第です。

かえってお手間をとらせ、失礼しました。

どうぞこれからも宜しくお願いします。私も、何か小説を読んだら、乃太郎さんにお知らせさせていただきたく思っております。

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マスコミでは村上春樹を批判できない空気ができているそうです(大江健三郎は自ら出版社に圧力をかけるという噂ですが、村上春樹はそんなことはしていないよね?)。そのことの是非はともかくとして、村上春樹はなぜそこまで強固なカリスマになれたのでしょうか?文学賞には恵まれていないし、ガンガン映画化・ドラマ化されているふうでもない。 これについてはちょっと思うところがあって、こんなサイトを運営しているわたしですが、趣味としては読書よりクラシック音楽の方がはるかに深くて、だから強引にクラシック音楽で喩えてみま... [続きを読む]

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