宗教復興・ナショナリズム・世俗主義
こちらのエントリ で紹介した 小杉泰 論文、、、
そのなかで、小杉先生は 1960年代以降の イスラーム復興 の 「 史的展開 」 を、9点にわけて略述している。
その第7番目に示されているのが、次の一段落である。
⑦ 民族主義が衰退し、世俗主義との対立が先鋭化する局面――イスラーム復興がアラブ民族主義をはじめとする民族主義の諸潮流と亀甲していることは言うまでもない。 歴史的な流れとしても、アラブ民族主義が衰退してイスラーム復興が隆盛した。 それは一九七〇年代、八〇年代と進んできたが、一九九〇~九一年の湾岸危機・湾岸戦争で、民族主義の衰退は決定的となった。 それまで退潮するアラブ民族主義を支えていたイラク政権が弱体化し、影響力も衰えたからである。 そうしたなかで、民族主義者が起死回生を願ってイスラーム派と対話する場面も現われるようになった。 これは、民族主義が世俗主義を捨てて、宗教的文化を吸収しようとする動きにつながる。 この局面のなかで、イスラーム復興運動も世俗主義を主要な敵とみなすようになった。 八〇年代後半以降の中東のイスラーム思想は、世俗主義に対する批判を非常に強めている。(29頁:強調引用者)
イスラーム復興の歴史についてもそうだが、やはりここで僕が興味をもつのは、 「 宗教復興・ナショナリズム・世俗主義 」 の三者関係である。
イスラーム復興とナショナリズムとの両義的な関係 (場合によってはくっつき、場合によっては離れる、という関係) は
- 酒井啓子編 『 民族主義とイスラーム: 宗教とナショナリズムの相克と調和 』 ( 日本貿易振興会アジア経済研究所,2001年 ) 巻頭の酒井論文 (→ @アマゾン)
- 池内恵 『 現代アラブの社会思想: 終末論とイスラーム主義 』 ( 講談社現代新書,講談社,2002年 ) (→ @アマゾン)
ですでに学んでいた。実際、こちらの拙稿 (→ @アマゾン) では そうした文脈で酒井論文を引いた。
小杉先生の上の一節で気になったのは、 「 世俗主義 」 という概念の使い方である。
この辺りをどのように整理していくかが、 宗教政治学 の大きなポイントになるだろうなぁ。
そしてもちろん、世俗主義概念を鍛えなおす作業は、宗教学者が担うしかない。
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