イラン革命
現代宗教論にとって宗教復興論は 核心的に重要である。
そして、いまさら言うまでもないことだが、、、
宗教復興論にとって イラン革命は きわめて重要な出来事である。
ということで、、、
前便 まで紹介してきた 『 増補 イスラームに何がおきているか 』 (16-41頁 )所収
小杉泰 「 脅威か、共存か? 「第三項」からの問い」 より、一段落を抜粋。
イラン革命直後から一九八〇年代前半には、百家争鳴の議論がなされた。今にして思えば、専門家もかなりあわてふためいていた。イラン革命が予測できなかった一因は、近代化を推進すると世俗化が進み、宗教は衰微する ( つまり、イスラームの政治的・社会的役割は消滅する ) という認識が強すぎたことにある。 実際この認識のために、イラン革命のみならず、イスラーム復興全体がながらく無視されることになった。 これは、近代化論の功罪の 「 罪 」 のほうに数えるべきかもしれないが、地域に固有な文化や価値システムの力を過小評価していた面もあるし、また、近代化すればどこでも西洋型の社会になるという単線論的な発展観が災いしたともいえる、ただ、その反動か、イラン革命を地域の文化的特殊性だけで説明する考えがだされたのも、やはり的はずれであった。つまり、イランはシーア派であり、シーア派というものはその成立時 ( 七世紀! ) から 「 反体制的 」 であった、というたぐいの議論である。(24頁: 強調引用者)
この段落で僕が注目したい点は ふたつある。
- イラン革命がイスラーム復興とイスラーム主義に 大きなドライブを与えたこと。 ひいては、イスラーム以外の宗教復興運動にも インパクトを与えた ( と思われる ) こと。
これはまぁ、衆知のことである。
ただし、、、わざわざ「 と思われる 」 と書き込んだ点には、どうかご注目いただきたい。
「 イラン革命のインパクト 」 と簡単に言うけれど、それって具体的にはどういうことなの? 個別の事例をちゃんと見ていけばいくほど、どうもその辺りがあいまいになりそうなのである。
たとえば、ヒンドゥー・ナショナリスト運動の場合 、イラン革命直前直後の一次資料に目をとおしてみると、当時この事件にはさほど大きな注目が与えられていなかったことがわかる ( そもそも、彼らの仲間うちで、イラン革命はほとんど話題になっていないのだ。それよりも、共産主義に対する警戒心の方が 何倍も強い。インドはそういう時代だった) 。
ヒンドゥー至上主義イデオローグたちが、イラン革命や 「 イスラーム原理主義 」 を問題視するようになるのは、やや時間がおくれて、1981年から82年以降のこと、それが過熱化しはじめるのは、さらにおくれて、83年頃からである。
インド的な、国内的な事情があって、そうしたタイムラグが生じたことが推察される。
この辺りの事情を細かに見ていかないといけない。 そうしないと、 「 ヒンドゥー復興 」 の実相が全然わからない、、、というか、 < イラン革命 → ヒンドゥー復興 > という単純な図式に陥ってしまう。これではダメ。
ということで、この方面については、先行研究がほんとにもう全然ありませんから、いま 自分でコツコツ研究しています。。。しかし、、、毎度のことではありますが、忙しくて忙しくて、、、まったく進んでおりません。
第二に、、、
- イスラーム復興は 「 ながいこと 」 そこにあったのに、観察者・分析者がそれを見落としていたこと。
これまでの宗教復興論では、次の問いがどうも弱かったように思う、、、
宗教復興という言葉で示される 「 現象 」 とは、誰のどんな目に現れ出ている像なのか、、、
特定の 「 現象 」 について論じる場合、論者はそれを外的事実ととらえているのか、内的像ととらえているのか、、、 現象学的思索の質 はここで決まってくるわけですが、、、これまでの宗教復興論は、その点がどうも心許ないように思われます、、、
この点に関連して 「 無視 」 を明確に指摘したことで、小杉先生は、宗教復興論がしばしば陥ってしまう落とし穴を、見事に看破している、と評価できるわけです。
ちなみに、、、このブログですでに何度も紹介させてもらっているように、拙稿 「 宗教復興と世俗的近代 」 (→ こちら ) は、小杉先生と同様の関心をもとに書き上げたものです。
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