オモシロ現代インド本
「 お勧めの現代インド本 」 ということで かつて こんなエントリ を書いた。
そのリストに加える、、、まではいかないけれど、、、もう一冊 オモシロ現代インド本 をみつけた。
NHK取材班・岡田正大 『 NHKスペシャル 神秘のインド大紀行 神々の台座・デカン高原 天空の王国・ザンスカール 』 日本放送出版協会,1991年.
長たらしい表題はご愛嬌。 要するに、岡田さんが中心で書いた 『 神秘のインド大紀行 』 という本なわけです。
岡田さんについては 後述。
この本、街角の古本屋で見つけた。表題だけを見て、怒るつもりで手にした。学生さんたちに 「 浅薄なインド観 」 の代表として紹介するつもりで。
「 神秘 」 なんて・・・まぁ・・・私たち地域研究者には・・・ちょっと・・・
だが、中身はぜんぜん違った。
インドの辺境を二つ、紹介した記録だった。その辺境こそ、長たらしい表題に含まれるデカン高原と、ザンスカールである。
「 デカン高原 」 のどこが秘境なんだよ!!
事情通のあなた の叫びが聞こえてきます。もちろんこれは、ネーミングがひどすぎるだけのこと。NHK取材班が赴いたのは、旧マディヤ・プラデーシュ州の東端、最南東端 ( 現チャッティスガール州 ) の部族民保護地域なのです。ここに入ったことのある日本人は、ほとんどいないはず。
「 デカン高原 」 とあるのは、少しでもキャッチーな言葉を使おうとする マスコミ人のならいなのだ と思われるのです。
一読 とても面白い。僕も知らなかったことが、分かりやすく 読みやすく書かれている。初期の人類学者の著作は ちょうど こんな読み物だったのだろう。
「 お勧め 」 までいかない理由は、地域研究者として見過ごしにできない 誤認があるからだ。
「 ヒンズー語 」 なんてのは まだよい。これは明らかに、分かってて書いている。一般の言い方にあわせようというのだ。
しかし、インドでは何千年も前から牛が食べられなかった、、、みたいな記述を読むと、、、フーー、、、ため息が出る。 とてもではないが、そんなことは言えない。食べられにくかった、、、ぐらいのことだろう。牛肉の忌避が ここまで広範に規範となったのは、おそらく19世紀前半のことであり、たかだか200年弱の伝統だ。
小谷先生の本 参照 (→ こちら @Amazon )
言いたいことは他にもあるけれど、まぁ 揚げ足とりになるだけなので、よす。とにかく面白いのだから、読んでみる価値はある。
ポイントは、もちろん!! 「 辺境 」 からのインド・ウォッチ。 通俗的なインド理解の浅薄さに 誰もが気づくだろう。
<メモ>
- 『 神秘のインド大紀行 』 に言及している 興味深い文章として こちら 。
- 岡田ディレクター、、、 「 やらせ 」 等々の問題が浮上したムスタン取材のチーフだったようだ。残念なことだ。イケイケドンドンのディレクターのようにお見受けするが、、、さて 『 神秘のインド大紀行 』 の方は どこまで信用して読んだらいいものか。。。面白い本なだけに、こういう余計な騒動は惜しまれる。
« ○○遺跡 | トップページ | インドって本当に広いなぁ »
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 島薗進 『ポストモダンの新宗教』 (2001)(2016.02.17)
- クザーヌスのお勉強(2015.07.21)
- 世間とは何か(2015.05.07)
- 近代経済人の宗教的根源(2015.04.23)
- 西ヨーロッパの宗教状況、あるいは世俗化と「見えない宗教」(2015.02.11)
「02A 南アジア研究」カテゴリの記事
- 近現代の日印文化交流 ― タゴールと遠藤周作 ―(2016.06.07)
- ヒンドゥーの霊的原初主義(2015.12.17)
- 映画上映会 『マダム・マロリーと魔法のスパイス』(2015.11.11)
- 【公開講座】 インド現代史(2015.04.04)
- 路上の神様―祈り(2014.11.30)
コメント
この記事へのコメントは終了しました。
hyottoshite mukashi jukude osewani natta kondo-sensei desuka? Moshisoudattara ohenjikudasai! (chinamini nihongo yomemasu.)
Ayako
投稿: Nakamura | 2006年9月 5日 (火) 06時25分