そうしたところのやるせなさ (1)
インドにはたくさんの 貧困や困窮 がある。もちろん日本にもあるが、インドには おそらく質量ともに数段きびしい 貧困や困窮 がある。 だから、日本人がインドに行くということは、別の種類の、普段は気づかないままでも許されるような種類の 貧困や困窮 を目の当たりにするということだ。
そしてもちろん、インドは貧困と困窮 だけ の地ではない。 素敵なことや素晴らしいこと が これまたたくさんある。
そんなインドとちゃんと付き合おうとするのは、思いのほか 大変である。
哀れみでも蔑みでも、讃えでも侮りでもない立場 ―― むしろ、自分が 「 誰 」 なのかを 考え直させられる体験 ―― それがとても大事なのだと思う。
インドだけではないだろうが、いわゆる 「 第三世界 」 についての見聞とは、 そうしたところのやるせなさ が大事なのだと思う。
とまぁ、、、こんな書き出しをもってきたのは、、、
こちらのエントリ で紹介した 小川忠 『 インド 多様性大国の最新事情 』 は、とっても優しい本である
と言いたかったから。
この種の問題に 「 正解 」 なんてないだろうが、小川さんのこの本は 彼なりに出したひとつのスタンスが、優しい優しいそのスタンスが 明確にあらわれていて、感銘をうける。
それがどういうものかを言う前に、 もうひとつ別の 「 明確なスタンス 」 を紹介しておこう。 対照例を先に示しておこう、というわけ。
すなわち、、、
こちらのエントリ で紹介した 榊原英資 『 インド IT革命の脅威 』
「 明確なスタンス 」 という点では こちらも何ものにも負けてはいない。
この本 ( 著者は榊原氏だけとなっているが、実際には 榊原氏を含め3名の人がこれを書いた ) のスタンスは これ以上ないくらいスッキリしている。
インド国民経済の浮揚、 「 パイ 」 の最大化、マクロ経済指標の改善、滴下理論、雇用創出、教育の推進、先端科学技術、金融、、、 古典的な近代化論 の実際的効用を 「 情報化 」 「 ネットワーク化 」 が進む現代において主題化すること
これが著者らのスタンスだ。
ここから容易に想像されるように、そこには ヒトたる 「 わたし ( たち ) 」 が
・・・ 念のために申し上げておきますが、ここでの 「 ヒト 」 とは、文学部的/人文諸学的な感性によって想像されるような 「 ヒト 」 のことです。 そんなものがどこまで重要なのかとの異論はございましょうが、ともあれ、榊原氏の本には そうした意味での 「 ヒト 」 が
登場することは ない。
政策を提言したり策定したりする者、企業活動に参与したり賛同したりする者 ( 引退組、予備軍を含む ) ―― そのような 「 仕事 」 をこなす人、あるいはそういう仕事人が関心の的としている人口 ―― これらが、この本でいう「 わたしたち 」 であり、また 「彼ら 」 である。
そして 「 日本 」 とは、かつて アジアの雁行型発展の先頭をきっていたのが、やや後退しはじめたという、そのエコノミーである。
そうした 「 私たち 」 「 日本人 」 にとって、インドは あらたに選択されるべき外交・貿易上の戦略パートナーである。 インドの 貧困や困窮、素敵なことや素晴らしいこと に、この本が触れないということではない。しかし、それはごくごく周辺的な言及にとどまる。
======
<長くなったから、ここで切ります。次便につづく>
======
<メモ>
« 宇宙開闢の歌 | トップページ | そうしたところのやるせなさ (2) »
「02A 南アジア研究」カテゴリの記事
- 近現代の日印文化交流 ― タゴールと遠藤周作 ―(2016.06.07)
- ヒンドゥーの霊的原初主義(2015.12.17)
- 映画上映会 『マダム・マロリーと魔法のスパイス』(2015.11.11)
- 【公開講座】 インド現代史(2015.04.04)
- 路上の神様―祈り(2014.11.30)
「03C 開発と開発学」カテゴリの記事
- 映画上映会 『マダム・マロリーと魔法のスパイス』(2015.11.11)
- 死、社会貢献、祖霊(2014.12.02)
- 路上の神様―祈り(2014.11.30)
- インド研究者がインド時評を書くという課題(2010.04.08)
- 【講演会】 国家をまもれるエリートは出現するか(2010.02.09)
コメント
この記事へのコメントは終了しました。





祝再開です。
一度役所に電話下さい。一人しかいないんで大丈夫。
投稿: 横手 | 2006年6月22日 (木) 22時07分
横手さん>
了解しました。お電話さしあげます。
本当にお久しぶりですねぇ。会えるのが楽しみです。
投稿: コンドウ | 2006年6月23日 (金) 19時01分