金力は救いである
先日、 「 資本主義スピリチュアリティ 」 というエントリを書いた。
そこで言いたかったのは、 スピリチュアル・ブームは、 グローバルな企業資本主義 の拡大、 ないしは 新自由主義経済理論 のグローバルなヘゲモニー獲得 という事態に対応している、 ということだ。
こうしたことを指摘するとき、 僕が 「皮肉ったり、 揶揄したりしているのではない」 のは、その前のエントリ に書いたとおりだ。 僕自身、 そうした世界のなかで、 たしかに スピリチュアルなものの癒すチカラ を必要としている。
さて、本論である、、、
上のような意味での現代社会において、 癒しやエンパワメントは 必ずしも スピリチュアルなものからだけもたらされる とは限らない 。
そのことを明確に示すインタヴュー記事を、 『AERA』 (2006.7.3号) でみつけた。
この号の AERA はなかなか面白かった。 すでに こちらのエントリ で一つのコーナーを紹介したが、 実は またもう一つ別に 紹介したい記事がある。 後日!!
下着通販会社 「ピーチジョン」 野口美佳社長をとりあげた、 人気コーナー 「現代の肖像」 である (63-67頁) 。 ライターは清野由美さん。
記事によれば、 PJ の顧客リスト数は300万人、 年商は160億。 当期利益19億円を 無借金で!! 実現しているとのこと。
社長自身が広告塔になるという PJ の企業戦略・・・ AERAによる勤労女性 (笑) のターゲット化・・・ こうしたことは先刻承知である。 承知のうえで、 のっかっていこうと思う。
以下、 引用です。 (ルビ省略)
20代でわけもわからず始まった結婚生活と怒涛の仕事は、 男性社会が女に強いる理不尽の連続だった。 仕事で生じる責任は同じなのに、 女の自分は一方で炊事や洗濯、 育児を支えねばならない。 そして、 そこに少しでも不備があれば、 口を極めて罵倒される。 仕事では上司、 私生活では夫。 そんな正二 [前夫、 野口正二氏――引用者注] に象徴された理不尽は、 愛情と憎悪、 理想と現実という二極をあざないながら、 長い間、 野口をふたつに引き裂いてきた。 ( 67頁 )
こうしたところをくぐり抜けて、 「立身出世」 を果たした野口社長。
ここまでだったら、 「女一代記」 みたいなノリでおしまいだ。
しかし、 この記事のクールなところは、 ちゃんと次のような問題に言及しているところだ。
とはいえ、 今の野口のライフスタイルが、 突出した経済力に支えられていることは間違いない。 それをそのまま、 女性の理想像に敷衍してもいいものか。 ( 同 )
この問いに対して、 記事は野口社長自身の考え方を示す。
「 私が切り開いているのは金儲けではなく、 自分自身の考えで自由に生きていい、 という価値観。 それが広まれば、 女性はもっとラクに、 女のまま、 社会になじんでいける。 ただ、 開拓者には経済力が必要で、 たまたま私がその役目に生まれた。 後に続く人は、 私のようにがむしゃらに稼ぐ必要はない 」
「開拓」 はまだ道半ばだ。 自分が自由になったら、 今度は社員が自由になってほしいし、 そこから日本全体、 世界全体に自由が広がってほしい。 だからこそ、 動けるうちに稼ぐと、 ハラを決めたのだ。
カネは自由の基礎である。
チカラは自由の足場である。
金力は救いである。
こんなところを考えないと、 世界の姿は見えてこない、 と思う。
<メモ>
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