宗教と政治過程
先日から話題にしている『宗教と現代がわかる本2008』 (前便は こちら)。 力作ぞろいの論集だが、中でも面白かったもののひとつが
井上まどかさんの 「気になる人物の発言集」 (275-62頁)
人選といい、解説といい、これはセンスにあふれるエッセイだった。 すごく面白かった。 平成天皇をはじめとして、何人かの言葉が取り上げられているのだが、 私がとくに注目したのは
村上正邦氏 (元労働大臣・参議院議員)の項 (270頁)
「宗教と政治過程」 とでも名づけたらよいだろうか、、、 具体的な政治の場面において 宗教なるものがどう関わっているか ―― 宗教政治学の重要な視角になる。
関連の前便は こちら
ということで、井上さんの文章をば 少々長くなるが 引用させていただく。
======以下引用(ただし、一部書式を引用者改定)======
神の御心にかなう政治こそ、
日本人にとっての政治だったんです。
相食むものもなく、病むものもなく、
苦しむものもなく、乏しきもののない、
そのような邦を、
この日本に実現するために、
私は政治に命を懸けてきたんです村上正邦
(元労働大臣・参議院議員)
=============
『証言 村上正邦――我、国に裏切られようとも』
(魚住昭著、講談社)より
村上氏は20代後半に、9歳年上の故玉置和郎氏(元総務庁長官)と出会う。玉置氏は選挙に出るにあたり、宗教団体のなかでいちばん政治に熱心でありながら候補者を持っていない団体として、生長の家を知る。玉置氏は奮起して谷口雅春氏の『生命の實相』(全40巻)を読破、日夜合掌し、村上氏に「あんたは俺の心の影だ。女房以上の存在なんだ。だから、俺と一緒になって成長の家に入ってくれ」と熱く語る。そこで村上氏は、1962年、30歳にならんとする頃に10日間の練成を受けることになる。村上氏の父親は酒や博打にお金をつぎ込んでしまう人で、「父母に感謝し得ない者は神の心にかなわぬ」(成長の家の経典『甘露の法雨』より)と教えられても、とてもその心境に達せずにいる。が、練成の5日目に、ある思い出から父親の大変さや苦しさを実感し、「親父の実相は慈愛深い笑顔だった……私を生長の家の教えに導くために現れた観世音菩薩だった」と心からの懺悔と両親への感謝の気持ちに満たされるという体験を得る。謙虚な気持ちになり、自分が変わることで世界を変えていくという教えを得たと村上氏は語っている。玉置氏とともに入信したときには、票をとるために入ってきた「偽者」だとの謗りを教団内部からも受けていたが、「生長の家政治連合」の国民運動本部長を務めながら、日本の宗教界が結集した「日本を守る会」(1974年4月結成)の事務局の中心メンバーとして働く。その後「成長の家」の路線転換で、教団から離脱することになるが、「成長の家」の谷口雅春氏の思想を核とした政治や教育の改革運動に邁進した。2001年にKSD事件関連の受託収賄罪で逮捕される。1審、2審で実刑判決を受け、上告して現在も係争中。1932年生まれ。福岡県出身。
======引用おわり======
さて、、、
このエントリを下書きしていた昨日、村上氏の刑確定のニュースが飛びこんできた。 偶然が重なるときは こんなものである。
「KSD事件 上告棄却 村上元労相」でグーグル ⇒ ★
【メモ】
井上まどかさんが、この「発言集」で「物故者」の一人として カール・ゴッチ を含めてくれたことは、個人的にツボである。 井上さんが引いているゴッチの言葉は
技術と精神は常に一緒だ。 決して嘘をつくな。 決してごまかすな。 そして決して放棄するな
『ザ・レスラー』(渡辺研著、JICC出版局)より
解説文もまたよい。 井上さんがプロレス好きだとは承知していないのだが、、、果たしてなぜゴッチがここに(笑)、、、嬉しい驚きだ
【リンク】
村上正邦氏のブログ ⇒ ★
『証言 村上正邦』@アマゾン ⇒ ★
生長の家のHP ⇒ ★
« 榎本美樹さんの 「亡命チベット人の宗教と政治の現状」 | トップページ | ■ ユーラジア・ヴィジョン ■ »
「01A 宗教学」カテゴリの記事
- 20世紀における「反近代」の変容(2016.02.24)
- 島薗進 『ポストモダンの新宗教』 (2001)(2016.02.17)
- [ワークショップ] オタクにとって聖なるものとは何か(2016.02.27)
- ヒンドゥーの霊的原初主義(2015.12.17)
- 映画上映会 『マダム・マロリーと魔法のスパイス』(2015.11.11)
「01B 宗教政治学」カテゴリの記事
- ヒンドゥーの霊的原初主義(2015.12.17)
- 儒学を入れるしかなかった近世神道、そして尊皇倒幕へ(2015.05.04)
- 近代経済人の宗教的根源(2015.04.23)
- 田中智学の八紘一宇(2015.03.20)
- 中華民族主義、もしくは漢民族復興主義(2015.02.26)
この記事へのコメントは終了しました。
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: 宗教と政治過程:
» 【政治過程】の口コミ情報を探しているなら [人気のキーワードからまとめてサーチ!]
政治過程 に関する口コミ情報を探していますか?最新の検索結果をまとめて、口コミや評判、ショッピング情報をお届けしています… [続きを読む]
コメント