M・セールの世界
- ミッシェル・セール 『解明 M・セールの世界』 梶野芳郎・竹中のぞみ訳,叢書・ウニベルシタス536,法政大学出版局,1996(原1991)年.
まぁ とにかくメチャメチャ面白い。
セールなだけに、どの部分を引用しても、意味があったりなかったりだが、、、
ぜひ書き留めておきたくなったのは、次の一節。
歴史の切れ目も同様に、われわれを過去と交信させている非常にゆっくりとした運動によって、それも果てしなく深いところで交信させている運動によって、下のほうで、維持されているのではないでしょうか。ですから、地表では、完全に断続的な切断であるかのごとく見えても、つまり短時間の激しさが町まちを破壊し、眺めを一変してしまう地震――ここでは歴史の震動、あるいは時として民衆の震動ということになりますが――であるかのようには見えても、実はとても深いところでは、きわめて規則的で、ほとんど感じることもできないほどの運搬が、まったくスケールの違う時間のなかで、継続しておこなわれているのです。
たとえば、宗教史がこのようなスケールの時間を垣間見させてくれるとは言えないでしょうか。宗教史は、目に見えなくなってしまうほど一番下の、このうえもなく深いところにある、もっとも埋もれていて、もちろん一番緩慢なプレートを形成しています。でもわたしは、そのうえさらに、もっとその下にある、われわれを盲目的に動かしている、あれほどに隠された、あの内部の大かまどの秘密が解けたらと思っているのです。 (208頁)
まさに そういうことなのだ。
« 読んでおきたい宗教論 (YONSH) | トップページ | 古代的なもの »
「01A 宗教学」カテゴリの記事
- 20世紀における「反近代」の変容(2016.02.24)
- 島薗進 『ポストモダンの新宗教』 (2001)(2016.02.17)
- [ワークショップ] オタクにとって聖なるものとは何か(2016.02.27)
- ヒンドゥーの霊的原初主義(2015.12.17)
- 映画上映会 『マダム・マロリーと魔法のスパイス』(2015.11.11)
「03A 思索」カテゴリの記事
- クザーヌスのお勉強(2015.07.21)
- 儒学を入れるしかなかった近世神道、そして尊皇倒幕へ(2015.05.04)
- 日本教における自然(2015.05.01)
- 日本教的ファンダメンタリズムの大成者(2015.04.29)
- 路上の神様―祈り(2014.11.30)
コメント
この記事へのコメントは終了しました。
まさにそういうことです。わたしも強く同意します。大かまどの内部を垣間見て、つぎつぎと衝撃を受けることは可能でしょうし、またこわごわながら、それを期待します。でも汲みつくすことはできない。それにしても「大かまど」がある以上、宗教はそれに下るまでの中間領域なのですね。底が脱けたってことですか。すこしは気楽に宗教学をやっていきたいものです。ではでは、お元気で。
投稿: GREG | 2009年4月17日 (金) 09時03分
師匠! 大変ご無沙汰し、また不義理をいたしております。申し訳ございません。
多くの方々とは異なり、師匠ならさほど驚かれないと思いますが、やや深刻なメンタル・ブレイクダウンと、私生活上での大打撃などがございまして、ここ数年、潜伏しておりました。
ご報告 遅くなりましたが、常勤職を得て 3年目に入りました。
セール、、、師匠なら、かなり「クル」だろうな、、、と思っておりました。 レスポンスありがとうございます。
狂気の深層、、、とでも申しましょうか、これはたしかに「実在」します。
また、宗教がそこから直接に生え出でおり、私たちからすれば、道程のなかばにあるということ、、、 まさに!まさに!
投稿: コンドウ | 2009年4月17日 (金) 11時53分
この前の日曜日、わたしたちは御復活祭を祝いました。近藤さんもまた復活されたとのこと。内面の大かまどから吹き上げてくる風になんとか乗りながら、充実した時間をお過ごし下さい。
曲りなりにキリスト者として、そして出来合いの道から逸脱しがちな遊び人として、神学の周縁で暮らしております。至福直観の状態にあったはずの生前のイエスの意識(よくニューエイジでいわれる「キリスト意識」とどこでどう重なるやら)といったミクロのまなざしと、ポスト世俗化時代のカトリシズムというマクロのまなざしで、と斜視気味にやっております。(挟み撃ち・・・何を?)
実際は「専業非常勤」で疲労困憊。研究からは程遠い日々ですが。。。
ではまたいずれ。この夏、京都ででも。お元気で。
投稿: GREG | 2009年4月17日 (金) 17時45分
師匠>
そうか、、、「復活」か、、、
まさにそうかもしれません。必死なもので、まだ自分がよくわかっていませんが、そういうことなのかもしれません。
==========
日々のご苦労、ご心労には、もはや何と言ってよいやら 分からないほどです。
師匠が私を支えてくださったのを、よく思い出します。
何の恩返しもできてませんで、なんだか 申し訳なく思います。
何か 何か せめて一緒に仕事などできるといいですね。
僕も、そこまでなれるように、もうちょっとがんばります。
==========
またお会いできるのを楽しみにしつつ m(_ _)m
投稿: コンドウ | 2009年4月18日 (土) 04時53分