連載 「インド総選挙 2009」 最近5便
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2009年5月19日付け朝日新聞 (朝刊) の社説にて
インド総選挙のことが取り上げられた
http://www.asahi.com/paper/editorial20090519.html
(リンク切れ御免、アサヒですから・・・)
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インド総選挙 ―― シン政権が担う重い責任
5年ぶりのインド総選挙で、国民会議派を軸とする与党連合が過半数に迫る議席を獲得した。与野党接戦という事前の観測を覆す勝利だ。
04年から政権を率いるシン首相(76)の続投が確実となった。
インドでは、独立闘争以来の国民会議派と、ヒンドゥー至上主義のインド人民党(BJP)が長く拮抗(きっこう)してきた。だが最近は、地域小政党や左翼政党が勢力を伸ばし、大政党はそうした中小政党と連立しなければ政権を維持できない不安定な状態が続いていた。
今回もその傾向が強まると予想されたが、国民会議派は545議席のうち単独で200議席以上を確保する見通しだ。中小政党との連立は変わらないが、基盤は格段に強くなり、安定した政権運営が可能になりそうだ。
さまざまな要因が絡まっての結果だが、結局のところ、貧困対策を重視してきたシン政権の実績と姿勢が評価されたと見るべきだろう。
BJP中心の前政権は市場経済化を推し進め、結果として貧富の格差が広がったと批判されていた。世界経済危機の波が押し寄せる中で、国営企業の民営化や規制の緩和などに慎重だったシン政権の経済政策が、有権者に安心感を与えたのではないか。
米国と原子力協定を結ぶなど対米関係を劇的に改善し、中国とも良好なつながりを築いてきた。こうした外交面での手腕も評価されたに違いない。
選挙戦で国民会議派は、ネール初代首相、第2代のインディラ・ガンジー首相らを生んだ「ネール・ガンジー王朝」の4代目、38歳のラフル・ガンジー氏を将来の指導者として前面に立てた。これも、古い政党のイメージをぬぐう大きな効果があったようだ。
インドの周囲を見回してみれば、イスラム過激派の攻勢にさらされるパキスタンやアフガニスタン、内戦に揺れたスリランカ、軍政が続くミャンマー(ビルマ)など、いずれもきわめて不安定な状況にある国ばかりだ。
この地域に人口11億人のインドが、安定した民主主義国家として存在する意味は大きい。シン政権には引き続き、南アジア地域の安定のために建設的な役割を果たしてもらいたい。
情報技術産業などを中心に高度成長を続けてきたインド経済だが、世界経済危機の波は押し寄せている。07年に9%台だった国内総生産の伸びは今年、5%程度となる見込みだ。
だが、中国とともに、世界経済を回復させる牽引(けんいん)役としての期待は高い。貧困対策と同時に、より開放的な経済への改革を続ける必要がある。
地球温暖化対策や自由貿易体制の強化などでも、新興国のリーダーとして担うべき国際責任は大きい。安定した政権基盤を生かして、大胆な指導力を発揮すべきだ。
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(1)
さまざまな要因が絡まっての結果だが、結局のところ、貧困対策を重視してきたシン政権の実績と姿勢が評価されたと見るべきだろう
とあるが、 前便 にも書いたとおり、 この言明には注意が必要
(朝日の論説委員は おそらく そのことが分かっている)
たしかに、 会議派連合の前政権は 支持された
しかし、 それは 議席数ほどではない。 得票率にこそ、それは表れる
(2)
BJP中心の前政権は市場経済化を推し進め、結果として貧富の格差が広がったと批判されていた
とあるのは、 その通りだろう。 ただし
インド人民党 (BJP) の 「ヒンドゥー・カード」 が もはや
全国的なアピールを失ってしまったという点も、 強調されてよかろう
(3)
また、 「第三勢力」 「第四勢力」 と称した 諸政党、 諸派
この台頭が 確固たるものになっていること―― これも強調されるべき
80年代半ばから、 この潮流はあった。 それがなかなか実を結ばなかった
今回も議席数としては、 パッとしない
しかし、 低カースト、 不可触民の諸政党、 地域政党などの台頭
これこそ、 インドの政治/社会の深いところの変化を表す
前回 (04年)、 前々回 (99年) インド総選挙の分析 ↓
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