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2009年5月10日 (日)

近代的なものの萌芽

こちらのエントリ コメント欄での mozu さん とのやり取り

そのなかで、 僕はまったく偉そうなことを書きました

その先には、イタリアがありまして、14世紀の黒死病です

あれが、かなりヨーロッパ精神史に 変化を加えた、、、と見据えております

そして・・・

煉獄、メメント・モリ、、、 もちろん関係があろうかと存じます

しかしおそらくは、あのまったく圧倒的な死の現前にさらされて

イタリアを中心に、「自分」というものへの自覚が極度に高まったこと

それが、 <人間・個人・理性>からなる 後の近代性の発端になったのでは――

とまぁ そんなことを見通しております

西洋史のズブの素人である僕には、 もちろんアンチョコがあります

それは、 澤井繁男先生 の研究です

  • 『ルネサンス文化と科学』 (世界史リブレット28, 山川出版社, 1996年)

最初の章で 澤井先生は、 『神曲』 と 『デカメロン』 を比較されつつ、 こう書かれる

ダンテは想像力を最大限に駆使して、 地獄、 煉獄、 天国界を活写した。 この三つの界は私たちの目に現実にはみえぬものであるが、 ダンテの偉大なところは、 そういった世界を視覚的にじつにみごとにありありと現出させた点にある。 いわば建築的な視覚美ともいえるであろう。 それと同様にボッカッチョの描く世界も視覚的に優れているが、 描く対象が異なるのである。 彼は生きた人物が活躍する場としての、 つまり実質的な背景としての都市を、 そして農村を描き出す。 そこには奥行きのある実存感がある、 生身の人間社会といったものが再現されている。 それは 「はしがき」 冒頭の、 「苦しみ悩む者に同情を寄せるのは人間の道だ (・・・ 略 ・・・)」 という文を読んでもわかる。 ボッカッチョの関心は人間の世界にあり、 神の国にはないのである。 生の方向にあって、 死の方向にはないといえる。

11-12頁

ペストとか地震とか戦争の時代にあっては、 人間は生活を規制する法律を捨てるものであり、 通常では許されない歓びに耽るものなのである。 ボッカッチョはそういう場を利用して、 『デカメロン』 を成立させたのである。

・・・ [中略] ・・・

こうした社会 (作品の前提) においては前述のとおり価値は転倒しており、 なにものにも束縛されずに自在に人間を表現できたわけである。 そこで表出された人間、 および人間観は中世の社会のそれではもはやなく、 生身の身体をもった生き生きとした人間像なのであった。 新しい人間観 (ルネサンス的人間観) の登場である。

15-16頁

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コメント

  わたしも世界史にはぜんぜん詳しくないんですが、『デカメロン』の下敷きにインドの『鸚鵡七十話』がありますよね。そこのところが、どうも引っかかってしまうのです。ボッカッチョは、なぜ『鸚鵡七十話』を持ってきたのでしょう。
 ひょっとすると、ヨーロッパの近代化の背景には、思ったより昔からインドが根深く入り込んでるのかもしれません。

yokosawa さん>

そうですね、インドのことは たくさんヨーロッパに入っているんですよね

まさに、オリエンタリズム!なのです

  教会からの圧迫や荘園主からの不当な扱いに加え、人口増加による食料不足が人々に与えていた不安は、並々ならぬものだったに違いないと思います。そこにペストの流行。大量の死者。

 大きな死の前で自由が見えるという構図は、私にはどうしても浮かんできません。人々はやはり救いを求めていたに違いない。
 そして、それが遠い外国の物語だったりしたのではないでしょうか。

 ルネッサンスへのつながりでいえば、大量の死者による人口減少が食料不足を解消することになったこと、荘園の弱小化、ペストに対して何もできなかった協会への不信感とか、そういったものであろうと(つまらないけれど)考えています。

yokosawa さん>

なるほど・・・ 言われてみれば、そうですね
まさに 「地獄」 の苦しみであるからこそ、 アチラの世界への想いが
強まる、、、 という、、、

個人的には、地獄のなかでこそ シニカルな「現実主義」が浮上する、、、
というのは、 わからなくもないのです
しかし、どこまでも 「個人的な」 感想にすぎませんね

このあたりは、あらためて調べなおしてみる価値がありそうです

ペストの前には、十字軍による社会の疲弊もありました
こうした長い過程のなかで、教会の権威が失墜したのは
まさにそのとおりでありましょう

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