石器時代の暴力
<連載 中沢新一論> 前便は こちら
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中沢先生 曰く
神話の思考は、 流動的知性=無意識の働きを直接に反映してつくられたものであることによって、 人間に深い思慮と動物や弱者にたいする思いやりのある態度を生み出すことができたのです。
『対称性人類学 カイエ・ソバージュⅤ』 119頁
人間と動物のあいだには、 同質の本質が共有されているのですから、 狩猟民たちはそういう自然をモノとして扱おうとしませんでしたし、 乱獲や破壊を抑える心理的ないし思想的な歯止めが、 人の心の中には厳然として存在し、 偉大な働きをおこなっていたのです。
同 152頁
人間と動物のあいだには神話的思考が発見した対称性の関係があるために、 狩猟民の世界には動物の乱獲もおきなかったし、 動物たちの暮らしている領域をみだりに人間がおかして、 彼らの生存を危うくするなどという危険が発生することもまれでした。
同 154頁
これに対して、 馬場悠男先生 は、 次のように書かれている
一万一五〇〇年前にカナダからアメリカ大陸を南下しはじめたアメリカ先住民は、 わずか一〇〇〇年たらずのうちに南アメリカの南端まで拡大した。 その過程でマンモスや大ナマケモノなどの大型動物をつぎつぎと絶滅させ、 その有様は、 「電撃戦」 とまでいわれたほどだった。 日本列島でも、 更新世末期にナウマンゾウやオオツノシカが絶滅したのは、 気候変化よりも人間の影響が強かったと推定されている。
馬場悠男 「ヒトの攻撃性と食人」 国立歴史民俗博物館監修、 福井勝義 ・ 春成秀爾編 『人類にとって戦いとは1 戦いの進化と国家の生成』 (東洋書林,1999年) 35-36頁
この歴史記述は、 なんと中沢先生のものと異なっていることだろう!
暴力に関する言明に付された価値としては 正反対だ!
馬場先生の理解を受けいれる人には、 中沢先生の理解は
とんでもなくロマンティック なものにしか聞こえないだろう・・・
こういう点は、 ちゃんと批判されなくちゃいけない!
【メモ】
もう一つ、 中沢思想のなかで私が見つけた
批判すべき (批判可能な) 点・・・
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コメント
この記事へのコメントは終了しました。
狩猟と暴力性に関する考察をするとき、私の考えはまるで自分に響いてきません。それは、たぶん私が女性であるからであろうと思われます。
性差については否定的な意見も多かろうと思いますが(特にうちの大学においては)、劣っているか優れているかの判断さえ省かれれば、私は肯定的な意見の持ち主です。(というか、当たり前)
狩猟=暴力=大好き、のわかりやすい例でいえば、モンスターハンターが大好きな男子学生を見れば一目瞭然。電車の中でさえ、みんなでよくがんばってる姿を見かけますよね。あんまり女の子が集団でモンハンしてる姿は見かけないし、DSでどうぶつの森に熱中する女子の方が圧倒的に多いでしょう。要するに、違うのです。(もちろん、モンハン大好き女子も、動森大好き男子も認めます。ちなみに、私はゼルダ派です。)
この違いがどこから生まれたのかは、たぶん生むことだと思っているのですが、今はうまく説明できません。
ちなみに、ライオンやコヨーテはメスが狩猟するのに対し、チンパンジーはオスがする。ここの違いはおもしろいと思います。
何か自分でうまく説明するための資料はないかと探したのですが、うまくいきませんでした。しかし、オルテガ・イ・ガゼットの資料を見ているとき、(私にとって)とんでもない副産物が手に入りました。
小田部 胤久先生の「人間的芸術の行方―20世紀前半における芸術終焉論の一変奏―」 おもしろいです。(やったー!)
投稿: u.yokosawa | 2009年5月22日 (金) 00時46分
yokosawa さん>
小田部先生 やっぱり面白いですか、、、 そっかぁ
読んでみないといけないですね、、、
とにかく そんな本、論文がたまっていくばかりです(泣)
投稿: コンドウ | 2009年5月22日 (金) 04時42分