イスラエル
臼杵陽先生が 新書を 上梓なさった
- 『イスラエル』 (岩波新書, 岩波書店, 2009年)
「イスラエルはユダヤ国家である」 という言い回しは、 民族・エスニシティ・宗教・宗派などの観点から多様なイスラエル社会の現実を見えなくしてしまう。 だからこそ、このような多様な現実を見ていくという立場からイスラエルを考えていこうというのが、 本書の基本的なスタンスなのである。
しかし、なぜわざわざこのようなスタンスを取る必要があるのか。 それはイスラエルの多くの人びとが今後もずっと 「ユダヤ国家」 であり続けようと望んでいるからである。 イスラエルはユダヤ人のための国民国家でなければならず、 そのためにはユダヤ人がイスラエルで多数派を占めなければ 「ユダヤ国家」 という看板をはずさなければならなくなってしまう。
「はじめに」 iv頁
イスラエルを論じた本書の特徴は、 イスラエルが事実上、 ロシア系やエチオピア系などの多様なユダヤ人のエスニック・グループのみならず、 民族的マイノリティとしてのアラブ人をも包接するたぶんか主義に向かっていることを議論の前提にしていることである。 逆に言えば、 イスラエルのたぶんか主義的性格のゆえに、 イスラエル国民の多くはその反動として、 ナショナリズム的な行動をとる傾向にある。 ・・・ [中略] ・・・ したがって、 ユダヤ人内部のエスニックな多様性をもつイスラエルの現実を述べ、 民族的マイノリティとしてのアラブ人問題も 「ユダヤ国家」 の将来を考えるための素材として正面から取り上げた。
「あとがき」 223-4頁
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まだ読了していないので、 感想等は別の機会に
あしからず
間違いなく名著となっているでしょう!
【メモ】
同じく 臼杵先生の 『中東和平への道』 (世界史リブレット,山川出版社,1999年) も読みやすく、大変ためになった
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» 今日の本「イスラエル」 [しろたんと本の感想とか書くとこ]
イスラエルの歴史よりも第1章のイスラエルの社会絡みの内容が面白かった。ユダヤ人とユダヤ教徒はイコールではなく、ユダヤ教徒としてイスラエルに帰還しても再改宗する必要があるらしい。様々な地域からやってきたユダヤ教徒にアラブ人が加われば一筋縄ではいかない。歴...... [続きを読む]
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