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2009年7月29日 (水)

異界からの光が照らしだす

前便 よりつづく

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  • 石井美保 『精霊たちのフロンティア: ガーナ南部の開拓移民社会における 〈超常現象〉 の民族誌』 (世界思想社, 2007年)

石井美保さん が論敵に選んだのは

  • 象徴的抵抗論
  • モダニティ論

のふたつである

これらの 「グランド・セオリー」 は

それ自体が分析者を誘惑する魔術的な魅力をもっている

281頁

なかでも最大の魅力は、 これらの言説において語られる物語の陰の主人公となるのはほとんど常に、 「彼ら」 を鏡像とした 「われわれ」 である、 という点にあるのではないだろうか。 象徴的抵抗論やモダニティ論において、 反省や嫌悪、 あるいは批判や憧憬の対象として問題化されるのは、 それが分析の対象としている非西欧社会の人びとではなく、 西欧社会に生きる 「われわれ」 とその歴史である

281頁

[わたしたちは] 象徴的抵抗論やモダニティ論の強力な主張に同調する過程で、 これらの議論が前提としている 「われわれ」 に同一化するのである

こうした傾向に対して、 石井さんの 「超常現象の民族誌」 は

ガーナ南部における呪術・宗教現象をひらかれた歴史性のなかでとらえること、 同時に地域社会のミクロな政治経済変化と呪術・宗教変容との絡みあいが生みだす独自のコンテクストを理解することを目指してきた。 さらにまた、 「身体性」 を鍵として、 超常的なるものに浸透された現実世界のありように接近しようと試みてきた

283頁

というのである。

ひらかれた歴史性――

独自のコンテクスト――

身体性から垣間見える現実世界のありよう――

そして、 前便 で引用した最終段落より、 再び次の一節をば

異界からの光が照らしだす日常世界の実践的論理

284頁

こうしたあたりが 石井さんが描き上げたかったものである

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【メモ】

アフリカ人類学の研究者であられる石井さんだが

最近では、 マンガロール近郊 (インド) をフィールドにされているらしい

足立明先生、 田中雅一先生、 関根康正先生 など

南アジア人類学の錚々たる先輩方の薫陶を受けておられるようなので

そのあたりが影響してのことなのかな、、、 と想像

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