無意味なものと不気味なもの
関連エントリ → 「狂い」 の構造
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<読んだ本>
とっても、 とっても 面白かった!!
- 春日武彦 『無意味なものと不気味なもの』 (文藝春秋, 2007年2月)
宗教学をやっていると、 世の中で 「宗教」 と呼ばれるものだけでは
どうも 「宗教」 の謎に迫れていないなぁ、、、 と思うようになるはずだ
「宗教」 とは呼ばれていない、 「宗教的」 とすら呼びづらい
だけれども、 明らかに 「宗教」 と通底する ――
そんな経験と時空間が 僕らの 《近代的 市民生活》 には ある!
その境域は いくつかの要素から成り立つのだけれど
その代表的なもののひとつを、 僕は
非日常的なもの 異様なもの
などと呼ぶことにしている
それはまさに、 本書で言う
無意味なもの 不気味なもの
のことなんだとわかった
その辺りのことを総括する、 著者 春日武彦先生 のコトバを
本書末尾から引用しよう
念のため 言い添えておけば、 これは冒頭から通読すべき本だと思う
そうして、 下に引用する言葉に 最後に出会うわけだ
本来、 これが、 本書の正しい読み方だと思う
本書でとり上げたさまざまな小説たちは、 その完成度や雄弁さにおいて一定はしていないけれど、 いずれも明瞭な輪郭を備えている。 ひとつの世界を構築している。 しっかりとした存在感を持っている。 だがどれも教訓やメッセージを携えているとは思えない。 娯楽のための綺談であると割り切ったとしても、 それにしては溢れ出てくるものが生々しい。 どこか精神の根源的な部分に働きかけてくる気配がある。 そのようにストーリーと与えてくる印象とが乖離している事実こそが寓意的なのであり、 しかもその寓意はおそらく精神の暗部に働きかけているであろうことから、 わたしはそこにあの不気味な昆虫との類似を感じずにはいられない。 だから、 どうしても、 〈昆虫的〉 なる奇異な言葉を作り出さずにはいられなかったのである。
扱ったいずれの小説も、 かつて読んだまま自分の心の隅に妙に引っ掛かり、 何かの拍子に意識に浮かび上がっては 「あれはいったい何だったのだろう」 と訝しい気分を覚えさせるものであった。 だがあらためてそれらを読み返すことは、 何か大切なものを失ってしまいそうでためらわれていた。 本書ではそのあたり覚悟を決め、 あえて 〈昆虫的〉 という言葉のもとに読み直してみた報告書という次第である。 おそらくkの行為によって昆虫的な小説たちは再び蠢きはじめ、 気づかぬうちにわたしや読者諸氏の心へ新たな卵を産み付けたに違いない。
285頁
《無意味なものと不気味なもの》、 あるいは 《非日常的なものと異様なもの》
これを表す範疇として、 上の引用文では
- どこか精神の根源的な部分
- 寓意
- 精神の暗部
- 何か大切なもの
などが選ばれている
一方、 それを感得したり経験したりする 人間の能力は
上記引用文の直前のパートで
- 直感
- 感じる
- 印象
などと呼ばれている
この辺りをすくい上げられないと、 宗教学は まったく面白くない
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【メモ】
本書をどうやって知ったのか、、、 覚えていない
おそらくは、 尊敬すべき書評家 ソコツさん のレビューを読んだのだろう
下記リンクより、 ぜひ そのレビューも読んでいただきたい、、、 です
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