宮崎駿のアニメ世界が動いた
こちらのエントリ で書いたように
『シュナの旅』 を20年ぶりに手にしてみて
宮崎駿について まともに考えてみたことがなかったと気付いた
戦後日本を代表する映画作家の作品が
この社会と世界の 深いところとリンクしていること――
しかも それがファンタジーという 宗教と世俗の通風孔に
素材を得ていること――
こういうことからして、 実際 宗教学者を標榜する僕などは
一度 ちゃんと考えてみるべきことだったのに・・・
ということで
- 上島春彦 『宮崎駿のアニメ世界が動いた――カリオストロの城からハウルの城へ』 (清流出版, 2004年)
を買って 読んでみた
数ある宮崎本、 ジブリ本のなかで この本を選んだのには
さしたる理由はない
アマゾンの読者評をつらつら眺めて、 評価の高かったものを選んだだけ
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読後感・・・
まずは、 「映画評って こう書くのか・・・」 という感想
『長靴ネコ』 まで含めるなら、 僕らの世代は 宮崎がらまりのアニメ世界に
どっぷりと漬かってきた
身近になりすぎて、 何をどう語ればいいのやら・・・
陳腐にならず、 彼の一連の大メジャー作品群を論評するには
どうしたらいいのやら・・・
素人の僕には 手つかずだったわけだが
この本で 少しは感触がつかめたように思う
しかし そもそも、 である
そもそも、 映画を論評するとは 何をどうすることなのか、、、
「作品」 を評するという 実に二次的な作業が生むものは何なのか、、、
文学部出身でありながら 僕は、 これまでそこに
どれだけ拘泥し 苦悩することができたか・・・ 心もとない
もちろん、 現在では、 インドという 「よその」 時空間を論じるはめになり
その問題には したたかやり込められることになっているのだが
足元の時空間で生じる 「作品」 には
物書きとしては 関わり合ってこなかったのは 事実!
そういうところを この本で反省させてもらった、 と思う
コトバを連ねるというのは 実に因果な行いだ
大学という制度に納めていただけているので
なんとなく その因業を素通りさせることもできるけれど
やっぱり そこには 単純でない問題構成があるんだな、と
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とまぁ こういう抽象的なことを書いていても面白くないので
上島さんの筆で たとえば こういうのが面白かった、、、
というのをば 一つ二つだけ 断片にてご紹介
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【その1】
『千と千尋』 を
足を取り戻す物語 (144頁, 他)
と読むのには まいった。 なるほど! と思った
子供が大人になることと、、、 自分の足をもった子供、、、
【その2】
湯婆婆 と ドーラ の類型を
死ぬ気のまったくない老人 (149頁)
と書いたりする
これは老人差別ではない (念のため)
物語/神話の 一キャラクターの精髄を述べているのだ
このズバッと来る感じは 読んでいて爽快だ
(ちなみに、 上島さんご自身は 「神話」 でなく 「民俗」 と言う)
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もちろん 各作品と この作品群は
上島さんとは異なる読みかたを 完全に許容する
僕自身、 「この作品は こう読みたいけどなぁ・・・」 という感想が
ないわけではない
しかし、 この本は、 大変尊重に値する 面白い 評論集でありました
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