ヒンドゥー教概念の誕生
「ヒンドゥー教」 という日本語 は
Hinduism という (および それに相応する) 欧米諸語の概念の 直訳 である
Hinduism などの欧州諸語が、 では インド亜大陸現地語の翻訳 かというと・・・
そうではない
これは、 欧州人が与えた 他称 である
インドの地 (ヒンドゥスターン) における観念=制度複合を
外部者である欧州人が観察して 「自分たちとは違うぞ」 ということで
さらに、 欧州の自己理解の一環として
Hinduism などの欧州諸語ができあがってきたわけだ
しかし! である
インドの地 (ヒンドゥスターン) における観念=制度複合を目にした外部者――
これはなにも 欧州人 (とくにヴァスコ・ダ・ガマ以降の) だけではない
何よりも かつてはイスラームの人々が そうした外部者であった
ということで・・・
こちらのエントリ でご紹介した 青木健さん の著作から引用である
- 青木健 『アーリア人』 (講談社選書メチエ, 講談社, 2009年5月)
10世紀、 「中央アジアでイスラームに改宗したテュルク系遊牧民」 が
インド亜大陸に 「進出」 してきた
彼らは 「現地人を十把一絡げにしか見ず」 「権力者として振るまった」
ガズナ朝のインド侵入を、 青木さんは言っておられるのだろう
そして、 このときに、 おそらく初めて 「ヒンドゥー諸教」 (複数形) という概念が生まれた。 近世ペルシア語文献で、 「イスラーム教徒たちの真理 (Haqiqat-e Ahl-e Islam)」 に対比して 「インド人たちの諸信仰 ('Aqa'ed-e Hendvan)」 と語られる宗教である。 近世ペルシア語文献の分析に従うなら、 この中に仏陀の教え、 サーンキヤの教え、 ヨーガの教えなどが含まれ、 全体としてユダヤ教、 キリスト教、 イスラームなどと並称される 「ヒンドゥー諸教」 を構成している
241頁
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