カルト、不可知論、あいまいな生
前便 よりつづく
【シンポ】 映画の中の宗教文化 追加情報 です
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当日、 最後の 「全体討論」 で いろいろ発言させていただきました
なかでも、 櫻井義秀先生 の質問に対しての私の応答が
具体的な映画作品にかかわっていたので
その点をば 記録させていただきます
Q カルト問題、 霊感商法問題などを背景に、 世の中の宗教的なことを、 その肯定的な側面を含めて、 学生さんたちに教えるというのには、 やはり危険な面もあるのではないか。 カルトにはまったり、 非合理的な世界観を強固にしてしまったり、 そういうことを導いていってしまうこともあるんじゃないか。 登壇者らは、 その点、 どんな工夫をしているか
僕は、 三つのことを学生さんたちにお伝えするんだ、 と応じました
- 「カルト」 という概念 をしっかり伝える。 何らかの状態に立ったとき、 彼女たちが 「これは 「カルト」 っぽくなかろうか」 と自問できるようにするため
- 「不可知論」 という立場 をしっかり教える。 科学だろうとなんだろうと、 わからないことはわからないでよい、 という立場。 あの世があるかどうか、 霊魂は実在するかどうか、 神は存在するのかどうか、 こうした問いは、 考えてみてもわからないことだ、 と ブッダの昔から言われてきた
- 「人間的生のあいまいさ」 を率直に見つめる態度をうながす。 《宗教》 か 《世俗》 か、 科学的か非科学的か、 そういったことは大事だけど、 実人生はそんな問いではできていない。 そのあいまいさをそのまま受けとめ、 上手にわたりあっていくという行き方を推奨する
で、 2 と 3 は互いに相当深く関連するわけですが
その事情をよく説明する映画として
- 「エミリー・ローズ」 (スコット・デリクソン, 2005年)
をあげました。 ただし、 神父さんが車にはねられるシーン!
あれさえなければ、 完璧だった、 と
あれは まったく不要なシーンであって、 非常に残念!
一方、 1については
授業で 映画に引きつけて話をしたことがありませんから
壇上ではすぐに思いつきませんでした
- 「ある朝スウプは」 (高橋泉,2003年)
が、 日本のカルト問題ということでは思い浮かぶ。 いい映画だ
しかし、 あれではちょっと、 足りないところがある
カルトの 《危険性》 を伝える映画ではないから、 と発言しました
発言の後、 壇上でいろいろ考えていたら
別の映画がいいんではないか、 と思い立ちました
時間がなくて、 マイクを通しては発言できず、 シンポ終了後
櫻井先生 (と、 お隣にいらした 西村明さん) にだけ
口頭でお伝えし、 意見交換をしました。 その映画とは
- 「悪い男」 (キム・ギドク,2002年)
キム・ギドク監督ですから、 そりゃもぉ 「エログロ」 満載
それが 女子大の授業で紹介するのを躊躇させるのですが
とらえられて抜け出せない、 不幸なのにそれに耐えてしまう
そして、 最後は…
という、 まさにカルト的なものの現場を、 学生さんたちには
わかってもらえるかもしれない、 と申し上げました
櫻井先生> ありがとうございました (=゚ω゚)ノ o(_ _)oペコッ
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