ゼロ成長時代のモデル
2009年9月18日付 朝日新聞 朝刊、 オピニオン面
新内閣への注文 09政権交代
水野和夫さん (三菱UFJ証券 チーフエコノミスト) の稿
ゼロ成長時代のモデル築け
が 非常に! 面白かった
残念ながら ネット上では読めないようなので
やや長めの引用で 内容を紹介したいと思う
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冒頭の二段落で、 水野さんはズバリ! こう述べる
ゼロ成長のもとでも豊かに暮らせるというモデルを、 ひるまずに築いてほしい。 選挙を通じて民主党が示してきた政策の中にも、 新たなモデルづくりの芽はある
パイを大きくすればなんとかなった時代は石油危機で終わったのに、 自民党はゼロ成長時代への転換を図ることなく成長にこだわり、 インフレとバブルでつじつまを合わせてきた。 それは結果として、 せっかく築いた一億総中流社会を崩し、 入れ替え戦のない1部と2部のリーグに社会は分断されてしまった
さらにこう述べられる
子ども手当とか高校までの教育費の事実上無料化といった民主党の政策は一見バラマキのようだが、 本来は分断された社会を元に戻す努力の表れだ。 ところが自民党から成長戦略がないと批判されると、 一連の政策は内需振興に結びつくなどとつくろってしまう。 相変わらず成長戦略などと言っている自民党も自民党だが、 ひるんでしまう民主党もどうか
景気対策が内需拡大につながらないうえ
労働時間の増大をもたらすだけだ、 との指摘をおこなった後
人口の減少で内需の伸びは期待できない。 外需もモノの輸出に頼っているかぎり資源高騰で引き合わない。 そういう経済構造の転換を知ってか知らずか民主党が打ち出した再分配の政策は、 時代の流れに沿っている
と述べられる
水野さんが進言するのは
- アジア重視の姿勢
- 20世紀モデルからの脱却
の二つだ。 第一の点については、 世界経済史のなかで
今やアジアが 「最終ユーザー」 になり
「ユーラシアの時代」 というのが反転不可能な潮流なわけで
それに棹差すという点で、 民主党の政策を高評価する
経済構造の歴史的変化にかんがみ、 さらに水野さんは
- サービスや知的所有権に関する分野での輸出へのシフト
- 脱石油 (経済界からの反対にもかかわらず、 断行すべし)
も推奨する
最終段落で、 あらためて次のように述べ、 本稿は閉じる
70年代以降の遠回りで失った分を取り戻すには10年でも足りない。 新内閣は少しずつ独自性を発揮していけばいいが、 成長戦略がないと批判されても、 むしろそれを持たないほうが21世紀の潮流にマッチしていると考え、 成長志向の名残を一掃してほしい
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本ブログで私は以前から、 「成長」 という語を無批判に使ってきた
たとえば、 「経済全体の成長戦略 1」 「同 2」 とか
「公正の実現こそ成長戦略」 とかのエントリがそれだ
しかし、 水野さんのエッセイを読んで気づくのは
「成長」 という言葉を批判できないからには
僕もまだまだ不徹底だった (ここが所詮 素人仕事) ということだ
水野さんの一見ラディカルに見えるが、 実に希望的な論に
身を正される思いがしました
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