合理/非合理の二律背反
こちらのエントリ まで紹介してきた
『思想地図 vol.3 アーキテクチャ』
巻頭のシンポ記録も いろんな意味で面白い
- 浅田彰・東浩紀・磯崎新・宇野常寛・濱野智史・宮台真司 「共同討議 アーキテクチャと思考の場所」 (『思想地図』 vol. 3 [特集: アーキテクチャ], NHKブックス別巻, 日本放送出版協会, 2009年5月, 12-75頁)
ここでは、 ちょいと断片的なメモ書きをば
宮台真司先生 の発言から (50-51頁)
湯浅誠さんが陣頭に立った年越し派遣村の狙いは、 厚労省の横に陣取ることで、 派遣規制や解雇規制をさせることでした。 しかし社会科学をやっている人間がみんな知るように、 資本移動の自由があるなかで雇用リスクが上がれば、 国内労働市場は必ず縮小します。 雇用リスクの高いところで企業は人を雇わないので、 解雇規制を要求すると、 必ず自分の首を絞めることになるわけです
でも官僚や政治家や学者がそういう正論を言っても、 世間から共感を得られません。 ベックが考えていないことでしたが、 「どうせ正論が通らないなら、 中央政府はもはや責任を取れないから、 市民の共同体的自己決定にまかせよう」 という面が 「市民政治」 にはあるのです。 「高度技術社会でリスクの合理的算定が難しくなった」 こと以外に、 「リスクの合理的算定が可能な問題についても合理的決定がアンポピュラーになんるので、 市民が勝手に不合理な決定をしろ」 ということ。 「共同体単位で愚行権を行使しろ」 と投げ出してしまうわけです
これは、 シニカルな批判 (冷笑的な文句) ではなく
宮台先生らしく プラグマティックな目標達成のための現状認識
ということだろう
政治的課題の二律背反 は いつも合理的なものではなく
合理/非合理の背反であることもある、 その好例だ
それも抱えこんで道を切り開くのは、 官僚というよりも
まずは 政治家の課題であるはずだ
【メモ】 派遣禁止でも正社員増えず!?
付言すれば、 非合理はもちろん、 宗教学の研究対象である!
つまり、 愚行権や愚衆政治とよばれるものは!
「《世俗》 の宗教学」 とは、 たとえば こういうテーマを追究する
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