火事場から走り出した座敷童
AERA (2009.10.19 号) に
「座敷わらしが出る温泉
」 炎上現場で
「着物の小僧」 目撃情報
伝奇に満ちあふれた温泉郷で起きた火事だけに、 伝説が伝説を呼ぶ。
火災の原因は不明だが、 人びとの想像は膨らむばかりである。
という記事が載った (26頁)
記者は 「編集部 井上和典」 さんとある
緑風荘―― 岩手県二戸市にある旅館で
「座敷わらしが出る宿」 ということで知る人も多い
2009年10月4日、 その緑風荘が ほぼ全焼した
「ボイラー室から煙が出ていた」 とのこと
ここまではご存知の方も 多かろう
で、 AERA の記事である
ところが、 敷地内にある小さな神社だけは、 不思議と火の手から逃れた。 ここには、 南北朝時代に6歳で病に倒れた南朝方の落人の男児、 亀麿が祀られており、 槐の間に現れる座敷わらしの正体とみられてきた。 地元の人が声を上ずらせながら言う。
ルビ省略。 以下同様。 ただし 「槐の間」 は 「えんじゅのま」
「火事で大焼けしてるっていうのに、 着物の小僧がこの神社に逃げ込んだのを見たっていうよ」
小さな温泉街には、 この話が瞬く間に広まった。 近所の旅館関係者は、 当日の宿泊者が全員無事だったことに安堵する。
「不幸中の幸いとして、 一人もお亡くなりにならなかったのは、 座敷わらしのおかげかな?」
ところで 座敷わらしとは “何” か
「妖怪」? 「もののけ」? 「精霊」? 「妖精」?
記者の 井上和典さん が選んだ概念は 「神霊」 だ
座敷わらしとは、 東北の旧家で語り継がれている蔵や家に住み着く神霊のこと。 幼い子どものような風貌をしているという
ルビ省略
こうした 「神霊」 にまつわる語りと観念を、 この記事は
「伝奇」 「伝説」 あるいは 「逸話」 「エピソード」
さらには 「想像」 などの概念で 一般化する
現代日本の 《宗教と世俗のあいだ》 を代表する公的言説の一例だ
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