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2009年12月12日 (土)

【研究会】 「神秘の東洋」という言説 趣旨

12月20日 (日) 北海道大学での研究会にて

発表をさせていただきます。 題して

  • 「神秘の東洋」 という言説: インドからの見取り図

発表の趣旨説明を書いてみました

ご笑覧くださいませ

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 ある日、 「遠藤周作とインド」 というテーマでの原稿執筆依頼が私のところに舞いこんだ。 今もって、 どうしてそういうことになったのかは不明だが (接点皆無の日本文学研究筋からの依頼だった)、 『深い河』 を何度か読んでいた私は、 書くべきことがあると直観して依頼を引き受けた。 四苦八苦して書きあげた原稿は、 論文集として無事公刊された。

       ◇

 このエッセイを書いていて痛感させられたことがある。 それは、 『深い河』 論は、 単に、 インドに対する現代日本人の向き合い方を問うということだけではなく、 宗教論の本質的な問題設定に直結している、 ということだ。 そして、 宗教学者を名乗っている私は、 それに応答する十分な構えをもっていない、 と。

 宗教論/宗教学/宗教研究の根本概念は 「宗教」 である。 そして、 そのようなものとしての 「宗教」 概念は、 まったく近代的である。

 どのような意味においてか。 第一に、 それが西洋出自の概念である、 すなわち、 キリスト教をベースとした概念であるという点で。 第二に、 宗教とはいまや宇宙と存在のサブシステムであるという点で。 そして第三に、 宗教とはいまや人間存在に普遍的である、 言い換えれば、 あらゆる諸宗教は根源的に同質であるという点で。 (ただし、 宗教概念の近代性をめぐる非西洋地域の歴史的事情の記述は、 別の項目と筋道を要するだろう。 ここでは、 とりあえず西洋地域に即して記述をすすめる)

 第二の点を原理化してきたのが理神論の系譜である一方、 第三の点の原理化は、 広い意味でのロマン主義により主導されてきた。 近代の宗教概念とその論/学/研究という営みは、 西洋キリスト教という背景のもとでの、 この二つの系譜の (決して整合的とはいえないままの) 統合である。

       ◇

 《インド》 を紛れもない 《神秘》 と直観するにあたり、 遠藤周作はむしろ、 宗教論/学/研究の原理的な構造自体に切り込んでいる。 なぜなら、 遠藤の 《神秘のインド》 観念は、 直接的には20世紀後半のアメリカのニューエイジの採用であるのは明らかであり、 さらにその淵源として、 「生」 「力」 そして 「神秘」 を基本概念とした欧州のロマン主義に棹差すことも明らかであるからだ。

 このことを確認した私は、 勉強をしなおすことにした。 掲げた問いは単純なものだった。

―― 《インド》 はいつから 《神秘》 ということになったのか

―― 誰がそのように観念したのか

―― その観念は、 いつどのような経路をたどって遠藤にまで至ったのか

 まずは、 大まかな見取り図が私の脳裏に浮かんだ。 これはロマン主義研究、 神秘主義研究を介しての宗教学基礎論のようなものになるだろう。 さらに、 南アジア地域研究にとっては、 少なくとも三つの課題への貢献となるだろう。

① 文化の政治学、 「表象の政治学」(スレーリ) の問題として、 ナショナリズムとポストコロニアリズム理解の中心への切り込み

② 上のことと関連して、 南アジアと西洋地域とのグローバルな交渉史記述の具体的な実践 (キーワードとしては、 帝国、 資本主義、 オリエンタリズム、 オクシデンタリズムなど)

③ 変貌著しい 《現代インド》(国民国家インドの現在) へのアプローチの再検討

 こうした見通しだけは得られるものの、 その細部がとにかく分からない。 このテーマは、 個人研究としては到底完遂できず、 共同研究という形をとらざるをえない、 このことは最初から明らかだった。

        ◇

 ということで、 このたび、 多くの方がたのご協力を得て 「《神秘のインド》 研究会」 を立ち上げることができた。 (とくに井上貴子さんという力強いパートナーを得たことが最初の一歩として決定的だった。 その後、 共同研究者の先生方はもちろん、 話題を投げかけた先生方からも激励をいただくことで、 本共同研究は順調なスタートを切っている。 この場を借りて、 皆さんに御礼申し上げます)

 まだ始まったばかりの研究会なので、 結論めいたことは言えない。 本発表では、 わずかながらも充実した議論の成果を組みこんだうえで、 私がもっている見取り図を紹介させていただきたい。

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