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2010年3月29日 (月)

宗教はもう 「民主主義」 化しきったか

前便 「「宗教」 という語をブラックボックスにしてはいけない」 より 直接のつづきです

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次の部分に示された 「宗教復興」 論への批判をやっております

  • 島田裕巳 『無宗教こそ日本人の宗教である』 (角川oneテーマ21, 角川グループパブリッシング, 2009年1月)

 このように、 二〇世紀の終わりから二一世紀のはじめにかけて、 世界各地で、 さまざまな宗教を背景とした原理主義が勃興し、 対立と抗争をくり返すことで、 世界平和を脅かすまでになった。 こうした事態は、 世俗化が宗教学の主たるテーマになっていたわずか三〇数年前には考えられないことだった。

106-7頁: ルビは省略

 経済がグローバル化していけば、 相対的に、 国の力は衰えていく。 先進国は、 どこの政府も巨額の財政赤字に苦しみ、 高度な社会保障制度を維持することが難しくなっている。 金利も低下し、 各国の中央銀行は、 金利の上げ下げによって経済環境に影響を及ぼすことができなくなってきた。

 それは、 国民国家の時代が終焉を迎えつつあることを意味する。 国民国家が国民の生活を支えることができたのは、 経済成長が続き、 潤沢な国家の財政を用いて、 社会保障制度を維持できたからだ。 それが不可能になれば、 国民の生活を国家が守ることはできなくなる。 経済格差は拡大し、 低所得者層が増えることで、 生活に不安を抱える人々が増加せざるを得ない。

 国家があてにならない状況のなかで、 人々が頼れるものは宗教である。 宗教は、 人々を結束させる力を持つとともに、 相互扶助の態勢を確立することで、 困窮しても、 国家によって救われない人々に救済の手を差し伸べていく。 さらには、 宗教が提供するビジョンは、 生活が困窮した人々に明日への希望を与えていくのである。

 したがって、 グローバル化が進行していけば、 宗教への期待度はさらに高まり、 その力はより大きなものになっていく。 ここ数十年のあいだに、 宗教をめぐって起こってきたことは、 国民国家の衰退と併行する現象なのである。

108-9頁: ルビは省略

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(2-2)

もう一つのことも指摘しておきたい

上の島田先生の図式には、 「宗教」 自体が

「民主主義」 や 「個人主義」 を自分のものとすることで

とくに20世紀後半以降、 決定的に変質した

という観点が まったく織り込まれていない

結果、 《宗教の時代》 の到来を宣言するという

とてもナイーヴな図式になってしまっている

仮に、 「宗教」 が 「人びと」 の不安と不満を吸引

しているのだとして、 その 「宗教」 には

何が期待されているのだろうか

来世での救い? 成仏? 天国への切符の獲得?

極楽浄土への転生? 悟り? 解脱?

神人一体の理想郷の実現? 神の降臨?

ハルマゲドン? 悪業の消滅? 悪魔の成敗?

まさかそのようなものではないだろう

「宗教」 への期待とは、 すなわち 「国民国家」 への期待と

入れ替え可能なものだ、 という島田先生の指摘は

したがって、 「宗教」 なるものの定義を

直接的に、 根源的にゆるがしているのだ

《宗教復興》 なるものの潮流において

合理性とヒューマニズムと人権思想が 

もうすでに どれだけ決定的なものとなっているか――

中東諸国やインドやスリランカ (島田先生が引いた実例) でも

それは まったくその通りである!――

我々が注目すべきは むしろそちらの方ではないのか

つまり、 「国民国家」 に対して 「宗教」 が対抗的に上昇する

そのような劇的な変化の時代として現代を見るのではなく

その 「宗教」 とやらが提示しているものを

《近代化》 のより包括的な枠組みのなかで

冷静に腑分けし、 より根源的な変化の道筋をコトバにする――

そういった課題こそが 重要なのではないか

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前便 で触れたように、 以上の論点については

  • マルセル・ゴーシェ 『民主主義と宗教』 (伊達聖伸+藤田尚志訳, トランスビュー, 2010年2月)

【参照】

また、 我田引水ながら

私自身、 次の二つの論文で、 まさにこうしたことを論じた

あわせてご覧いただければ とてもうれしいです

  • 「宗教とナショナリズム:現代インドのヒンドゥー・ナショナリズムの事例から」 (池上良正・小田淑子・島薗進・末木文美士・関一敏・鶴岡賀雄『岩波講座 宗教9 宗教の挑戦』 岩波書店, 23-49頁)
  • 「宗教復興と世俗的近代:現代インドのヒンドゥー・ナショナリズムの事例から」 (『現代宗教2005』 東京堂出版, 83-105頁)

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<連投 おわり>

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