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2010年3月27日 (土)

厳密かつ丁寧な国民国家システム史を構想すること

前便 「宗教復興の政治史を再検討する」 より 直接のつづきです

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前便 にて 次の引用をしました

  • 島田裕巳 『無宗教こそ日本人の宗教である』 (角川oneテーマ21, 角川グループパブリッシング, 2009年1月)

 このように、 二〇世紀の終わりから二一世紀のはじめにかけて、 世界各地で、 さまざまな宗教を背景とした原理主義が勃興し、 対立と抗争をくり返すことで、 世界平和を脅かすまでになった。 こうした事態は、 世俗化が宗教学の主たるテーマになっていたわずか三〇数年前には考えられないことだった。

106-7頁: ルビは省略

 経済がグローバル化していけば、 相対的に、 国の力は衰えていく。 先進国は、 どこの政府も巨額の財政赤字に苦しみ、 高度な社会保障制度を維持することが難しくなっている。 金利も低下し、 各国の中央銀行は、 金利の上げ下げによって経済環境に影響を及ぼすことができなくなってきた。

 それは、 国民国家の時代が終焉を迎えつつあることを意味する。 国民国家が国民の生活を支えることができたのは、 経済成長が続き、 潤沢な国家の財政を用いて、 社会保障制度を維持できたからだ。 それが不可能になれば、 国民の生活を国家が守ることはできなくなる。 経済格差は拡大し、 低所得者層が増えることで、 生活に不安を抱える人々が増加せざるを得ない。

 国家があてにならない状況のなかで、 人々が頼れるものは宗教である。 宗教は、 人々を結束させる力を持つとともに、 相互扶助の態勢を確立することで、 困窮しても、 国家によって救われない人々に救済の手を差し伸べていく。 さらには、 宗教が提供するビジョンは、 生活が困窮した人々に明日への希望を与えていくのである。

 したがって、 グローバル化が進行していけば、 宗教への期待度はさらに高まり、 その力はより大きなものになっていく。 ここ数十年のあいだに、 宗教をめぐって起こってきたことは、 国民国家の衰退と併行する現象なのである。

108-9頁: ルビは省略

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こうした立論への批判を企てようというわけです

書いてみたら かなり長くなりました

批判は明確に二点に分かれますので

本便では ひとつめ だけを

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【批判 1】

まずは ごく分かりやすい指摘から―― 

  1. 福祉国家は国民国家の典型ではない
  2. 成長の果実に浴した国民国家はごく少数だった
  3. 低成長/不況の循環にかんがみ、 ここで言われている変化はいつの時代のことなのか。 察するに、 20世紀後半のことのようだが、 どうもそこがはっきりしない

まず出てくるのは こうした 「政治経済学的」 と言える批判だ!

とくに 中東諸国やスリランカ、 インドに言及して (104-7頁参照)

自説を展開しているのだから なおさらだ

僕が責任をもって応えられるインドについてだけ見ても

島田先生が略述するような 《インド国民国家の歴史》 は

まったく見られない!

なるほど 島田先生がおっしゃろうとしていることも

完全に荒唐無稽とまで言う必要はないだろう

極度に抽象化してしまえるのなら、 それが許されるのなら

20世紀の後半、 国民国家の能力と可能性は

明らかに変化し、 部分的には低下している

それはたしかだし、 また その変化が

「宗教」 と呼ばれてきたものに変容をもたらしている

と、 言えないこともない。 しかしながら!

―― ここが大切なところなのだが ――

そのような立論は抽象的すぎて ほとんど何も指示できない

有体にいえば、 印象論にすぎない

厳密かつ丁寧な 国民国家システム史を構想すること――

《宗教復興の政治史》 記述において

それこそが先決である

そして、 その課題に 真正面から取り組んでみれば

「グローバル化」 を独立変数として「宗教復興」 を説明するのは

実は まったく簡単なことではない、 ということに

誰もが すぐ 気づくはずなのだ

宗教学者が 政治経済学をやらねばならない理由は

まさにここにある!

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【批判 2】

二つ目の批判は ちょっと分かりにくいかもしれない

第一の批判で触れた論点の拡大深化バージョンである――

島田先生の理解=説明図式は、 要するに

[……]

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<次便に つづく>

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