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2010年7月23日 (金)

マリー・ダリュセック 『あかちゃん ル・べべ』 (高頭麻子訳)

「初孫」 の話をしたら、 同僚の高頭先生より

  • マリー・ダリュセック 『あかちゃん ル・べべ』 (高頭麻子訳, 河出書房新社, 2003 [原 2002] 年)

をご恵贈いただいた

今までほとんどだれも書いたことのない、 いわば閉ざされ、 世界から取り残された時空

が書かれているという本書

以下、 「訳者あとがき」 (189-94頁) より

====================

訳者は 次のような読者をまっている――

 「いいお母さん」 になれない、 という罪悪感を抱えている女性たち、 「知識人であるため」 に、 「良い母」 になることを諦めている仕事をもつ女性たち、 そして、 赤ちゃんと母親の親密空間には入り込む余地がないと思い込んでいる男性たちにこそ、 是非読んでもらいたい一冊である。

194頁

では、 この本は いったいどのような本なのか――

 あかちゃんをめぐる固定観念の雲塊は 「母性」 を賛美するあまり、 「いいお母さん」 になれなかったらどうしよう、 という恐怖、 「罪の意識」 を、 母親たちに植えつけている。 こうして 「あかちゃんのお守りには権利というものが存在しない、 したがって女には働く権利がない」(10ページ) という三段論法が出来上がる。 女性の学者には、 母と子を直視することなく、 母性という 「己れの神聖なる神秘に感動のあまり震えた声」 によって、 「私たちを男と分け隔てるものが何かを思考不能に」(137ページ) してしまう人も多い。 また他方では、 それと表裏をなすかたちで、 「知識人であり、 かつ良い母であることはできない」(九八ページ) というボーヴォワールに代表される、 知的な女性の側からの偏見もある。

190頁: ルビ省略 漢数字はアラビア数字にあらためた

 こうした固定観念・偏見の亡霊たちと闘うため、 ダリュセックは、 先ず自分のあかちゃんを 「ル・ベベ」 と定冠詞をつけて記述することによって、 甘ったるい 「おくるみ」 に包まれた状態と決別し、 「虫を前にした昆虫学者」(79ページ) のような、 曇りのない目であかちゃんを見つめようとする。 だがそれは、 母性を否定することでも、 あかちゃんへの愛情を制限することでもない。 かえって、 「書く幸せと、 あかちゃんとともにある幸せ」 は、 「互いに食い合うところか、 育み合う二つの幸せ」(98ページ) だと言い切っている。

191頁: 漢数字はアラビア数字にあらためた

構成は、 大きく前後半にわかれている

まずは前半について――

 「第一のノート」 は、 若い母親にとって心身とも不安や戸惑いの大きい時期に書かれ、 上記のようにあかちゃんの反応や感情的な交流も少ないため、 やや文章も硬く、 頭と体、 思考と感情のバランスが欠けているようにも見える。 しかし、 それこそが、 若い母親が置かれた状況なのであり、 今までほとんどだれも書いたことのない、 いわば閉ざされ、 世界から取り残された時空なのである。

191-92頁

そして後半

 それに対して、 「第二のノート」 は、 本当に 「書く幸せと、 あかちゃんとともにある幸せ」 が溢れんばかりの、 生き生きとした文章になっている。 「虫を前にした昆虫学者」 どころか、 あかちゃんの病気で我を忘れてヒステリックになったり、 他人の子供のニュースでも涙もろくなってしまったり、 あかちゃんが思うようにならないと機嫌を損ねたり、 誰もが経験する感情的なダメママぶりも書かれている。 あかちゃんの知覚と認識がどのように出来上がっていくのか、 とういうことを考えさせる観察もある。 あかちゃんとお母さんとの間に、 性的な感覚が入り込むことが決して特殊なことではない、 という考察もある。 そのどれもが、 短い断章という形で置かれているために、 刺激的だが重苦しさのない、 楽しい読み物になっている。

192頁

おもしろそうな本だなぁ、と思いました

拝読いたします

ありがとうございました> 高頭先生

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コメント

あら、先生もお仲間になられたんですね。
孫って、ほんと、目に入れても痛くないですね。lovely

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