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2011年2月 8日 (火)

《世俗の宗教学》 におけるメロドラマ的映画の重要性

「メロドラマ」 とは何か――

四方田犬彦先生 は、 その近代的世俗性を強調する

メロドラマは、 巷間で用いられているように、 荒唐無稽な感傷的見せ物でもなければ、 俗悪な悲劇の紛いものなのでもない。 それは超越的な運命をめぐる人間の挫折を描く悲劇とは、 そもそも完璧に対立する演劇的概念であって、 神の不在と偶然を前提として、 観客を感情的高揚へと導くことを旨としている。

四方田犬彦 『映画と表象不可能性』 (産業図書, 2003年) 208頁

これにすぐつづけて 概念史の整理がおこなわれる

メロドラマという言葉は、 そもそもが一七世紀にイタリアで唱えられた 「メロディーをもったドラマ」 を起源としている。 それはフランス革命の前後から、 悲劇にとってかわって新興ブルジョワジーの世界観と道徳意識を体現する演劇様式として興隆し、 一九世紀には演劇はもとより、 オペラ、 小説、 美術といった多くのジャンルにまたがるモードとして猖獗をきわめることになった。 それが二〇世紀にハリウッド映画を通して、 ひろく全世界に普及した経緯については、 今さら言を重ねる必要はないだろう。

同208-9頁

つづく段落では、 最初のメロドラマ規定がパラフレイズされる

メロドラマの特徴とは、 まず運命でも超越者の全能性ではなく、 道徳が究極の主題として選ばれていることである。 登場人物はえてして複雑な内面をもたず、 善玉と悪玉に分けられ、 彼らの波乱万丈なる闘争が物語の中心を占める。 その根底にあるのは偶然であり、 そこから通常ではありえない廻りあいや、 なぜか読まれなかった手紙、 既のところでの行き違いといった一連の主題が導き出される。 階級違いの恋、 不当な虐待とその補償、 家族の離散と再会といった物語が特権的に採用されるのは、 そのためである。

同209頁

つづいて 映画学における研究史の概略である

映画研究にはじめてメロドラマ研究を持ちこんだトマス・エルセッサーによれば、 メロドラマは、 その時代の高承にして制度的なる芸術がけっして接近することのできない人間の実存を取り上げるという点において、 ある条件さえ整えば、 充分に体制転覆的な力をもちうるとされている (註7)。 無声映画時代から、 あらゆるフィルムにはなんらかの意味でメロドラマ的傾斜が流れていたが、 それは五〇年代のハリウッドにおいて、 ドイツ表現派の流れを組む [ママ] 監督たちが距離化とアイロニーの美学にもとづく演出を展開させたとき、 きわめて精鋭な批評的要素をもつにいたった。 そこではブルジョア家庭と資本主義社会という二つの抑圧的システムのなかに生きる人間の心的複合が、 すぐれてイデオロギーと歴史の批判の問題として実現されているというのが、エルセッサーの論旨である。

==========

7 エルセッサー 「怒りと響きの物語」、 石田美紀、 加藤幹郎訳 (岩本憲児他編 『新映画理論集成』 第2巻、 フィルムアート社、 一九九八に収録) を参照。 メロドラマの歴史と映画における意義については、 ピーター・ブルックス 『メロドラマ的想像力』 (四方田犬彦、 木村慧子訳、 産業図書、 二〇〇二) ならびに、 その巻末の四方田が著した解説を参照。

同240頁

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ここに表明されているのは

メロドラマ (とくに映画におけるそれ) の 《世俗の宗教学》 にとっての重要性である

近代的世俗性を生きる とはどういう事態か…

近代的世俗の人間にとって 映画とは何か…

それは どのような機能を担ってきたのか…

あるいは 世俗的近代において 映画と人間は何を共有してきたか…

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