【近代の個人主義にいたる波乱に富んだ長い道程】 チャールズ・テイラー『近代』 メモ#2
人類史のなかで人間はたいてい相互補完という様式で生活してきたし、 しかもそれは程度の違いはあれ何らかの階層秩序と結びついていた。 ポリスの市民の場合にみられるように、 平等の島というものがかつて存在したこともあるが、 しかしより大きな絵のなかに置いてみれば、 とたんにそれは階層秩序の大海に浮かぶ島にすぎないことがわかる。 こうした社会がいかに近代の個人主義とかけ離れているかはいうまでもない。 むしろ驚くべきは、 理論のレヴェルだけでなく社会的想像の変容と浸透のレヴェルにおいても、 そうした社会が紆余曲折を経ながら何とか近代の個人主義にたどり着けたことのほうである。 いまではこの想像(イマジナリー)は人類史上かつてない力をそなえた社会と結びつくまでになり、 これに抵抗しようとするのは不可能であり狂気の沙汰であるようにもみえる。 しかしだからといってわれわれは、 これがつねに真相だったという時代錯誤的な思考に陥ってはならない。
こうした誤りを正す最良の解毒剤は、 この理論がついにわれわれの想像力(イマジネーション)をこのように把捉するまでにいたる、 波乱に富んだ長い道程のいくつかの局面を、 一つひとつあらためて思い起こすことである。
26頁 ルビは括弧内に示した
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