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2012年8月 3日 (金)

科学者は信頼できるか

2012年8月2日付 朝日新聞(朝刊)の 「オピニオン」 欄

  • 「科学者は信頼できるか」

「欧州連合(EU)の主席科学顧問 アン・グローバーさん」 との

ロングインタビュー記事だ

記名は 「編集委員・高橋真理子」

前文にはこうある

 福島原発事故の後、科学者への信頼が揺らいでいる。 これは日本だけなのか。 欧米各国は、 科学者の意見を代表して政権に伝える首席科学顧問 (チーフサイエンスアドバイザー) を持ち、 欧州連合 (EU) も昨年12月から置いた。 その初代に就任した生物学者アン・グローバーさんにダブリンで会い、科学とどう向き合うべきかを聞いた。

グローバー氏の紹介文にはこうある

 56年、 スコットランド生まれ。 専門は生化学。 アバディーン大学教授。 06年から11年までスコットランド主席科学顧問。

ネットでは 会員限定で読める

以下、 気になったところを書きぬきしておきます

===================

 「 […] 科学は完全無欠ではありません。 それでも、私たちが手にしているものの中で最善であり、 リスク評価に実際に役立っています」

 ―― 他の道はない?

 「その通りです。 (科学以外を頼る) 他の道ははるかに悪い」

==========

 ―― 福島事故後の日本では、 原子力や放射線防護の専門家が、 それまで原子力発電を推進してきた人だと見なされて、 発言が信用されない状況が生まれました。 同様のことが欧州でも起こりうるでしょうか。

 「いえ、 起こらないと思います。 人々が誰を信頼するかについては調査がたくさんあります。 それらの調査では、 欧州では一般に科学者の信頼度が高い。 私がよく知るのは英国ですが、 科学者への信頼はとても高いです。 政府研究機関の科学者は少し落ち、 政治家やジャーナリストはもっと下になる。 日本で科学者が信頼されていないと聞き、 とても残念です。 日本の市民にお勧めしたいのは、 科学者を観察し、 何を言うか聞き、 徹底的に問いただすことです。 なぜそう主張するのかを聞けば、 科学者は説明するでしょうし、 説明すべきです。 逆にお聞きしたい。 科学者が信用できないなら、 いったい誰を信用するのですか?」

==========

 ―― 英国で狂牛病が広がったとき、 政府は当初、 人に感染しないと言いましたが、 後になって間違いだとわかりました。 このときは英国の科学者も信頼を失いましたよね。

 「はい。 そう思います」

 ―― どうやって信頼を取り戻したのですか。

 「良い質問ですね。 私は、 間違いを認めることによってだと思います。 正直さがとても大事です。 そして、 透明性です。 当初は人に感染する証拠がなかった。 それは事実です。 その後の研究で感染しうるとわかった。 それで、 我々は間違っていたと正直に伝えたわけです」

====================

【以下追記 120803 14:35】

…と 以上のことを書いたところ

ツイッターの上で 島薗進先生  グローバー氏らへの批判を語られた

曰く、 「日本で起きている混乱について何も言えていない」 と…

そのまま再録させていただきます

==========

1 【科学者の信頼喪失問題】 Nature の Geoff Brumfiel の ”Fukushima's uncertainty problem,” July18, http://www.nature.com/news/fukushima-s-uncertainty-problem-1.11031 … は 「科学の信頼喪失」 を否定しているかに装い、 突然安全論に飛躍し読者はとまどう。

2 【科学者の信頼喪失問題】 ジェフ・ブラムフィールのコラムは実は科学の限界を認めるのが主な内容。 朝日の高橋真理子記者 8/2 「EUの首席科学顧問に聞く 科学者は信頼できるか」 http://digital.asahi.com/articles/TKY201208010571.html?ref=comkiji_redirect  … 「科学の信頼喪失」等、 間違いを認めればすぐに克服できると。

3 【科学者の信頼喪失問題】 朝日が紹介するアン・グローバーもネイチャーのジェフ・ブラムフィールの記事も日本で起こっている種類の 「科学の信頼喪失」 が彼らには未経験である事を告白しているようなもの。 あっさり打ち消そうとするが、 その根拠はきわめて薄弱。 朝日科学医療部はこれをどう展開する?

4 【科学者の信頼喪失問題】 昨年10/10日経は滝順一編集委員の 「科学者の信用どう取り戻す ―真摯な論争で合意形成を」 という記事を掲載 http://chikyuza.net/n/archives/15403 … 、 『中央公論』 本年4月号は吉川弘之学術会議元会長、 元東大総長の 「科学者はフクシマから何を学んだか」 を掲載。

5 【科学者の信頼喪失問題】 吉川論文は 「地に墜ちた信頼を取り戻すために」 の副題で容易ならぬ課題であると認めてる。 日本国内では率直に科学の信頼喪失を認める科学者も増加。 それこそ科学のモラルの基礎となる知的誠実というもの。 日本の科学者にも科学ジャーナリズムにも問題を見抜ける人は多い

6 【科学者の信頼喪失問題】 海外はどうか? Nature の Geoff Brumfiel の ”Fukushima's uncertainty problem,” 朝日の高橋真理子記者 「EUの首席科学顧問に聞く 科学者は信頼できるか」 はこの問題が世界的な波及力をもっていることを示している。

7 【科学者の信頼喪失問題】 だが、 イギリスからこの問題に参入してきたアン・グローバーもジェフ・ブラムフィールも、 日本で起きている混乱について何も言えていない。 認識できないのは当然。 BSE問題とは規模も背景も違う。 原爆被害の科学や核大国による核情報管理という大問題が関与 (了)。

2012年8月3日 9:50 から 10:01 にかけて

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