« 2014年1月 | トップページ | 2014年3月 »

2014年2月の記事

2014年2月21日 (金)

「宗教紛争は宗教が原因」 という端的に誤った観念 その2

前便「その1」は こちら

もうひとつ例があったのでご紹介

====================

「でも、宗教が必ずしもその人にとって有益とはかぎらないでしょう? この前の事件みたいに、宗教的信念のせいで生命を落とす人もいるし、キリスト教だって昔はひどく弾圧されて、殺された人も多かったんでしょう?」

「まったくその通りです。昔から宗教はしばしば虐殺の原因になってきた。キリスト教徒とイスラム教徒、カトリックとプロテスタントが、何百年も血で血を洗う闘争を続けてきました。今も世界のあちこちで宗教的対立が原因の殺し合いが続いています。アイルランド、ボスニア、スリランカ、ティモール……」

山本弘 『神は沈黙せず』 上巻,角川文庫,220頁



====================

この部分で明らかなように、「宗教紛争は宗教が原因」という端的に誤った観念は

二つの認識に起因するもんです

  1. 小集団、もしくは1名以上の個人による「宗教的信念」にもとづく特定の犯罪行為を 数十万~数億の人たちが 何十年にもわたり苦しめられる、大規模な「紛争」と混同すること
  2. 古代から現代まで、世界各地における各種紛争を 無条件に一範疇におさめてよいと判断すること

これらの点がまさに当てはまるということから

このテキストは実に典型的、 ないしは症例的なんであります

2014年2月20日 (木)

ミメーシスの未知の空間、あるいは予期不可能な未来

雑誌『思想』2014年2月号 掲載、

宮崎裕助によるジャック・デリダ 『散種』 邦訳の書評より その2

その1 との対比になっている文章です)


====================

 イメーヌ [hymen: 「婚姻」と同時に「処女膜」を意味する特異な語] という出来事の成就と非成就のはざまで、マラルメのエクリチュールが痙攣状態を引き起こす。それは、いかなる意味やシステムにも回収しえないミメーシスの未知の空間、余白を開いている。この全般的ミメーシスの運動、その諸効果そのものは、あらかじめ予期しえず、事後に生ずる意味作用を通してのみ間接的に見出されるほかはない。しかしそのような予期不可能な未来を、いかなる真理とも理念とも無縁のまま、あらゆる拘束から解かれた状態にとどめておくためにこそ、デリダの読解は、意味作用の水準で決定不可能なものとして書き込まれたマーク ――「パルマコン」 [治療薬=毒薬]  や「イメーヌ」 [婚姻=処女膜] のような―― を、当のテクストのうちに丹念に再標記(リマーク)してゆくのである。

宮﨑裕助 「〈書評〉限定的ミメーシスから全般的ミメーシスへ―ジャック・デリダ『散種』を読む―」 『思想』 2014.2,102頁

====================

ミメーシス概念の伝統的な、プラトン主義的図式

哲学者・宮崎裕助は 雑誌『思想』2014年2月号

ジャック・デリダ 『散種』 の邦訳の書評を寄せている


そこからの抜粋――

====================

一方で、ミメーシスは、それなくしては不可視にとどまる事物自体、自然(ピュシス)の実像を開示する働きである(呈示としてのミメーシス)。他方で、ミメーシスは、オリジナルである事物や事象を忠実に複製(コピー)しようとする働きである(模倣としてのミメーシス)。両者のミメーシスは、真理がアレーテイア(非隠匿)と解釈されるかアデクワチオ(合致)と解釈されるかで働きは異なるが、いずれにせよ、それらはどちらも伝統的に、真理解釈を準拠として善し悪しを評価される対象であり続けてきた。つまり「ミメーシス」は真理に合わせて整除されている(二九八頁)のであり、その働きは限定されている。

宮﨑裕助 「〈書評〉限定的ミメーシスから全般的ミメーシスへ―ジャック・デリダ『散種』を読む―」 『思想』 2014.2,100頁 (傍点は太字で示した)

====================

なお、この直後、宮崎は

しかしながら、マラルメが「黙劇(ミミック)」において見通していたミメーシスの働きは、こうした伝統的な図式にはけっして回収されることがない。少し詳しく追ってみよう。

とつづけている (この点につき 続報 を書きました 20140220 12:08 追記

上の引用箇所は デリダが示す 「ミメーシス概念の伝統的な図式 ―― プラトン主義的図式 ―― 」 を真理の解釈との関係から要約したものだ、とのことです

2014年2月19日 (水)

「宗教紛争は宗教が原因」 という端的に誤った観念

【追記 140221】
続報を書きました。 ちょっとだけ立ち入って論点を整理してみました

==========

「宗教紛争」 というコトバがある

英語でも religious conflict というぐらいだから まぁふつうの表現なんだろう

このコトバにこめられた観念は

ある紛争は宗教が原因である、あるいは少なくとも 宗教が主要特徴である

というものだろう

ボクの研究によれば、 この観念は 端 的 な 間 違 い なのだが…

なかなかそれを納得してもらえない

説得のためには ちゃんとした研究をねばり強く出しつづけるしかないんだろう

ということで…

「宗教紛争は宗教が原因だ」 という素朴な観念の、無邪気な表出の例をひとつ

====================

 私はインターネットで見たニュースを思い出し、悲しくなった。アメリカでは中絶反対を唱えるキリスト教原理主義者グループが、中絶を行なっている病院を爆破し、八〇人の死者を出した。北アイルランドではプロテスタントとカトリックの反目が再燃し、過激派による爆弾テロや銃撃事件が続発していた。インドではイスラム教徒とヒンドゥー教徒の衝突が起きていた。イランでは、イラク・シーア派の過激派組織が、イラン・シーア派の現体制に対して大規模な武装闘争を展開していた……。

 子供の頃、地下鉄サリン事件の報道を見て抱いた疑問が、また浮上してきた。宗教は人を幸せにするものではなかったのか? なぜそれがこんなに多くの不幸や争いの原因になってしまうのか?

山本弘 『神は沈黙せず』 上巻,角川文庫,152頁

====================




2014年2月 5日 (水)

エコノミメーシス R&D

「エコノミメーシス研究会」 は 「藝術の宗教学」研究会を改称したものでした

この度、 この集まりに関わってくださっている方がたと話し合い

「エコノミメーシス R&D」 と再改称することにしました

以下、趣意文でございます。 

====================

 「エコノミメーシス」(economimesis)は哲学者ジャック・デリダが提唱した概念である。エコノミーとミメーシス、経済と模倣という二つの語を合成したものだ。ここで「模倣」(ミメーシス)とはとくに藝術を、より広くは人間の表現活動全般を、さらに言えば「生」そのものを指す。

 さてしかし、私たちはデリダ研究を行うのではない。デリダの思索とこの概念とにより喚起される多様なイメージとその連接を頼りに、エコノミメーシスが豊かにあらわれる場を創出したいのである。そのための研究開発(リサーチ・アンド・ディベロップメント)を行うのが、エコノミメーシス R & D である。

 もう少し具体的にいうなら、諸種の作品の制作において、経済活動と「崇高なもの」をともに実現し、その様を皆で愛でる—— このような動きを引き起こしたいと願っているのである。

 「崇高なもの」という言葉は、美学の伝統から引用されている。しかし、詳細な学説上の検討はここでは不要である。私たちに非日常的な感情を引き起こすものをさして、この言葉を選んだのだ。特別な、強烈な体験ばかりがそれではない。日常のなかにヒョッコリ顔を出す、えも言われぬ心の様態もまた、まったく同等に大切なものだ。

 ポエジー、美、充実などなど。「驚異」「永続的なもの」「非合理的なもの」などと呼ぶ人もいるだろう。宗教の用語やスピリチュアリティの文脈で理解されることもあるだろう。

 どのような言葉であれ、私たちは、《あの向こう側》を成立させる作品/製作物と、その実作現場と、そのマネタイズとのあいだに滑らかなつながりを生みだすことを、決定的に重要だとみなす。「崇高なもの」をあらわし伝える作品が、現実の経済への組み込みを果たすこと。さらには、「現実の経済」のあり方自体をも、同時に変容させていくこと。

 これは何か特別なことだろうか。そうではない。表現とその受容と再表現の現場では、すでに、いやむしろつねに起きていることだ。私たちは、この現象へと、この現象が湧き上がる源泉へと直接足をふみ入れようとする。

 エコノミメーシスの研究と開発—— この言葉にこめられた願いはそのようなものである。

====================

2014年3月13日 加筆訂正 一回目

サイト内検索
ココログ最強検索 by 暴想

Twitter


読書メーター

  • mittskoの今読んでる本
  • mittskoの最近読んだ本

鑑賞メーター

  • 最近観たビデオ
    mittskoの最近観たビデオ
2016年7月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            

イーココロ

無料ブログはココログ