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2016年2月24日 (水)

20世紀における「反近代」の変容

こちらのワークショップ での主要参考文献のひとつ

島薗進 『ポストモダンの新宗教―現代日本の精神状況の底流』 (東京堂出版,2001年) より

近代は、「反近代」をつねに内包させてきた――

この事実が、ポストモダンを論じるのをいつもむずかしくさせます

この本では、とくに近代日本の新宗教団体の歴史に注目して

「反近代」の変容について語っている箇所があります

それは、「見えにくい、しかし大変大きな変容」だと言われています


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 幸福の科学が新新宗教[1970年代以降に発展した宗教団体]による近代的価値への批判のあり方の典型だというわけではない。これは一つの例にすぎないのだが、ここにポストモダン的な近代批判という点でこの時期[1990年を前後する時期]の時代相が如実に表現されているのも確かだろう。かつての新宗教[江戸時代の末期から1960年代までのあいだに発展した宗教団体]の中にも、西洋的近代への批判や唯物思想批判を唱えるものが少なくなかった。大本教はその代表的な例である。

 しかし同じく近代批判、唯物思想批判といっても、その意味が相当に異なってきている。大本教では「われよし」の態度が告発の主たるターゲットであり、相互扶助精神の崩壊を招く利己主義、私利追求主義が厳しくとがめられた。そこではヨコの連帯の意識が基礎にあり、それを脅かすものに批判が向けられた。新新宗教においてはヨコの連帯の意識は薄く、タテの秩序を回復することに力点が置かれている。資本主義的な自由競争を是認しつつ、差異に基づく階層的秩序を再建し、悪平等がもたらす混乱に対処しようとするのである。宗教はヨコの連帯や苦悩への共感のよりどころとしてよりも、聖なるものに基づく差異を確立し、距離をもって対すべきものの場所を指し示す根拠として理解されている。

 こうした相違は「反近代」、すなわち近代的価値への抵抗のモメントが、二〇世紀を通り過ぎる間にこうむった、見えにくい、しかしたいへん大きな変容を反映している。[1970年代以降]新宗教において地域の小集団が発展しにくくなってきたことは、第二章で述べた。これは身近な生活感覚を分かち合う人々のヨコの連帯の感覚が弱まってきたことと関わりがある。暖かい共同性の中に住まおうとしても、身近な生活空間の中では容易に実現しそうではなくなってきた。砂漠の砂粒のような孤立感に脅かされるとき、メディアを媒介としたゆるやかな連帯意識[たとえば、「新霊性運動=文化」にみられる]はとりあえずの落ち着き場所と見える。しかし、それは安定した秩序や根の降ろしどころを示してくれるものではない。

 自由競争が生活の隅々にまで浸透するとともに、画一的な平等主義の抑圧性が自覚されるようになり、相互扶助に根ざした共同性が現実性を失い、イメージすることも難しくなってきた。無理にそれを実現しようとすれば、内閉的な集団を構成することになってしまい、安定感を提供するように見えながら、実は抑圧性を強化するしかないというように見える。また、その方向をとるにせよとらないにせよ、ヨコの連帯よりも差異と階層性を強調する方向で、近代への抵抗を組織化する傾向が目立つようになってきた。秩序の元基をヨコの連帯よりも、聖なる中心と階層性の方に見出す考え方が力を得てきたのである。


236-237頁: 注は省略


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